#065 さぬきうどんの生産量

「さぬきでは、うどんを年間どのくらい生産しているのか?」
みなさん想像してみてください。 香川県農業生産流通課の資料によると次の表のようになっています。本当は、 1980 年以前のデータもあれば生産量の推移がよくわかっていいんですけど、残念ながら手に入りませんでした。この表の味方について簡単に説明しておきます。

香川県 のうどん 生産 量 の 推移 単位 :トン
ゆでうどん
生 うどん
乾燥 うどん
香川 合計
全国 計
占有 率
1980(S55) 8,247 2,160 6,468 16,875 289,895 5.8%
1985(S60) 8,165 4,106 6,958 19,229 302,023 6.4%
1989(H1) 12,518 7,119 7,202 26,839 301,789 8.9%
1990(H2) 15,856 7,846 7,031 30,733 302,643 10.2%
1992(H4) 21,742 10,550 7,425 39,717 319,329 12.4%
1993(H5) 24,465 8,717 7,694 40,876 319,086 12.8%
1994(H6) 25,771 7,666 8,958 42,395 317,022 13.4%
1995(H7) 26,477 7,695 8,388 42,560 313,607 13.6%
1996 28,332 7,713 9,187 45,232 312,640 14.5%
1997 29,521 7,260 8,722 45,503 301,155 15.1%
1998 30,705 7,700 8,418 46,823 294,722 15.9%
1999 32,935 7,237 7,756 47,928 291,837 16.4%
2000(H12) 33,107 7,999 8,502 49,608 300,271 16.5%
2001 36,856 8,979 7,247 53,082 301,408 17.6%
2002 38,268 9,610 8,877 56,755 295,341 19.2%
2003 42,134 12,032 12,819 66,985 303,475 22.1%
2004 40,514 11,840 12,880 65,234 294,875 22.1%
2005(H17) 39,796 9,766 12,091 61,653 285,374 21.6%
2006 * 40,087 8,539 12,034 60,660 278,501 21.8%
2007 + 39,192 9,248 12,210 60,650 272,883 22.2%
2008 + 41,057 8,640 12,787 62,484 273,266 22.9%
2009 + 38,600 8,480 12,563 59,643 259,313 23.0%

*) 2006年の結果は、2007.5.19に追加。
+) 2006~2009年の結果は、2010.5.28に追加。

 

表には3種類のうどんがありますが、これは次のように分類しています。「ゆでうどん」とは、既にゆでて袋に入ってあるうどんのことで、湯煎するだけですぐに食べられる簡便性がウリです。近年台頭が目覚しい冷凍うどんも種別としては、このゆでうどんに入ります。「生うどん」はうどん生地を延ばして切った状態のものを指し、食べる前にゆでる必要があります。また「半生うどん」といって、生うどんを少しだけ乾燥させているうどんも、統計上は「生うどん」として取り扱われます。そして、「乾燥うどん」は、ずぅ~と昔からスーパーの乾物コーナーに並んでいる伝統あるうどんです。
いろいろな種類のうどんがある理由は、もちろんそれぞれ一長一短があるからです。例えばゆでうどんは、確かにお手軽ですが、ゆでてから時間が経っているのでコシがないと感じる人もいます。そこで、登場したのが冷凍うどんです。いつでもゆでたての食感が味わえるので、近年急速に需要が伸びてきました。しかし、冷凍うどんといっても、場所をとるのでいつもフリーザーに入れておくもが面倒とか、タピオカでんぷんが沢山はいっているので、その独特の食感が逆に気になる、という声も耳にします(理由はいずれまたどこかで)。

生うどんや半生うどんは、ゆでるのが面倒ですけど、ゆであげ直後のコシが堪能できます。でも生うどんであれば、賞味期限を延長させるために、保存料を使ってるのが気になることがあります。また保存料を使用していない半生うどんであっても、できるだけ新しい方がおいしく食べることができます。そして乾燥うどんは、常温で1年間と保存性に優れていて、おいしくゆであがりますが、3つの中ではゆで時間が一番長く、利便性、簡便性が優先されるこのごろではなかなか苦戦を強いられています。いずれにせよ、これら3種類のうどんは個性があるので、それぞれに需要があります。

では、改めて表を見てみましょう。まず、ゆでうどんが、 1989 年頃から急激に伸びているのがわかります。 1985 年には 8000 t余りであったのが、 30 年には 40,000 tと 3 万t以上増えていますいくら香川県民がうどん好きといっても、以前にも増してこれだけのうどんを食べ始めたとは、考えられません。その主たる原因は、冷凍うどんの台頭にあるようです。実際、県内の大手冷凍食品会社のHPを見ると、 1977 年に冷凍うどんの量産開始とあります。うどんの冷凍技術が発達したので、冷凍うどんを量産し、これらを県外に向かって輸出し始めたと考えるのが自然です。

生うどんについても同様のことが言えます。1980 年の2,160t から生産量は伸び続け、 2003 年にはピークの 12,032 tを生産しています。某化学製品会社のHPには、 1977 年にエージレス(って登録商標なので、どこかすぐにわかりますど)という脱酸素剤の生産を開始したとあります。これによって、添加物の助けをかりずに、水分をある程度含んでいる食品の保存期間の延長が可能になりました。よって、生うどんでも県外に販売することができるようになったのです。

乾燥うどんも 6468 t (1980 年 ) → 12,880 t (2003 年 ) と倍増しています。しかし、この場合の事情は少し異なります。実は乾麺の市場は、全国的にみれば年々減少しています。乾麺はおいしいにもかかわらず、ゆで時間が長いこと、それに食の多様化が進んだことにより、需要が減少しました。にもかかわらず香川では逆に増加しています。これは近年、産地直送品、いわゆる産直品が人気となり、うどんも同様の現象がおきたと考えられます。

つまりこれまでは、量販店に並んでいる乾麺は全国展開しているNB(ナショナルブランド)が一般的でしたが、最近の傾向として、産地優先の流れが加速しています。単なる「○○うどん」というネーミングよりも、「さぬき○○うどん」という方が、消費者に対する訴求力が高いので、香川で生産される乾麺の生産量も増加したと考えると筋が通ります。実際、日本そばについても近年は、信州、つまり長野産が増加しているようです。

最後に全国生産に占める香川県産のうどんの量に注目してみましょう。 1980 年には 16,875 tと全国シェアーは僅か 5.8 %にしか過ぎなかったのに、直近の 2005 年においては 21.6 %と3倍以上に増えているのがわかります。また、これまでの生産高の最高は、 2003 年の 66,9885 tで、この数字からも最近のさぬきうどんブームのピークは 2003 年であったことがわかります。しかし、ブームは峠を越えたとはいえ、まだ 60,000 t以上生産していて、高水準を維持しているのがわかります。