#169 2008年の三大ニュース・・・小麦の内外価格差問題
今年もまた一年が終わりました。今年は世相を表す字として「変」が選ばれたように、製粉業界も小麦の値上げラッシュの対応に追われ、未曾有の年でした。で、今年の個人的な3大ニュースは次のように選びたいと思います。
① 小麦価格暴騰
うどん用のASW は昨年は5%と10%、今年は30%と10%、2年間で4度値上げされ、累計では65%も上昇しました。
②小麦粉価格上昇
20年間上がったことのない小麦粉が2年間で、なんと900円以上も上昇(業務用25kg)。これで、安い旨いのさぬきうどんも、流石に100円のところは姿を消しました。
③外麦価格(輸入小麦)と内麦価格(国産小麦)の不整合性
外麦価格の決定方法は、前回説明(新着情報#168)したように8ヶ月間の買付価格の平均が基準になります。よって、今回のように国際価格が暴騰したときは、僅か2年で65%もあがります。一方内麦価格は、入札制度をとっています。それぞれの銘柄毎に、入札を行い最高価格を表示した業者が購入するシステムです。ただ2つ条件があります。
(1)値幅制限
ひとつは値幅制限といい、提示できる金額は前年度価格の±7%以内に限定されます。つまり平成20年の価格が100だとすると平成21年度産の入札で提示できる価格は93~107の範囲ということになります。これはあまり価格が変動すると、売る人も買う人も調子が悪いというので、このようになっています。
(2)播種前契約(はしゅまえけいやく)
これは価格を収穫されてではなく、その前の年に決めましょうというルールです。種を播く前に値段を決めてしまうので、こうよばれています。例えば平成20年の「さぬきの夢2000」は今年の6月に収穫されましたが、この価格は昨年の8月に入札が行われました。理由は、価格を安定させるためとのことですが、何度考えても個人的にはよく理解できません。
いずれにしても、一番の矛盾は外麦と内麦とが価格決定では違うレールを走っているので、なかなかうまくいかない点です。実際外麦は今年だけでも43%上昇しました。一方、昨年からの国際価格の上昇基調を受けて、内麦も人気が上昇し平成20年度産はすべて107%で落札され、入札制度としてはうまく機能していません。
これだけ内外価格差が開くと「さすがにまずい」というので、この夏おこなわれた平成21年度産の入札では、特例的に基準価格が30%引き上げられました。つまり平成20年の価格が100なら、今年は130±7%、つまり120.9~139.1の範囲で入札が行われました。それでも、まだまだ外麦の比べると割安感があるというので、ほとんど銘柄は2年続けて上限(139.1%)に張り付きました。正確にいうと内麦は昨年も7%上昇しているので、昨年初めの価格を100とすると、来年夏にできるであろう平成21年の小麦価格は147%になったわけです。
独断ですが、いくら特例とはいえ30%に決定された理由がいまいちよくわかりません。それにそのうち特例ばかりになってしまうとも限りません。話は戻って、結局2年かかって、外麦は165%になり、平成21年度産の内麦は147%に決まりました。ですからこの夏の時点では、まだまだ内麦には割安感がありました。
問題はここからです。ご存じのように原油価格ははじけて一気に下落し、最高値の1/3までになりました。また小麦相場も投機マネーが引いてしまったので、標準的な価格に戻りつつあります。そうなると来年の4月の改定時には、下がることが予想されます。またひょっとすると来年の内麦が市場にでまわる頃に行われる10月の改訂時には、外麦は更にさがり、そうなると今度は価格が逆転し、内麦は一気に割高感ででてくるかもしれません。
いずれにしても1年前に価格を予想することは、神様でない限りは不可能で、結果としてはどちらかに不公平感が残ってしまいます。今後は、早急に内麦・外麦の価格決定方式をなんとか改善して、リンクできるよう願ってやみません。
蛇足ながら個人的な3大ニュース:
①近くのものがますます見にくくなった。
②今年も花粉症で痛い目をみた。
③ペダルを踏む力が益々衰え、追い越されても全然悔しくなくなった(とはいいながら、やっぱり悔しい!)。
しかし今年も健康で一年を終えることができ、充分です。それでは、みなさんどうか良い年をお迎えください。来年もよろしくお願い申しあげます。