#228 うどん生地⑧・・・垂直方向の変化(手打ちうどんの場合)
うどん生地をロール圧延するとき、垂直方向の変化は、一様に延びるのではなくて、中間部分が圧延方向とは逆の方向に押し出されることがわかりました。つまり垂直方向に着色した太線はくさび形に変形し、更に薄くなるに連れてくさび部分の角度が小さくなり、最終的には地面に対してほぼ平行になります。考え方として正しいかどうかはともかく、ロール間隙を通過するときには、その圧力を小さくするためにロールに接していない中間部分が後方に押し出されると考えれば、理解しやすいかも知れません。
では次に、団子生地を平板で挟んで延ばすとどうなるか想像してみてください。今度は方向性を持たないので、上下、中間部分すべて均等に薄く延びるでしょうか?残念ながらそうはならないようです。結論から言うと、垂直方向に着色した2本の太線は、算盤玉(算盤って知ってますか?)の様に変形します。言葉で説明するのは難しいので次の図をご覧ください。
これは団子を平板で上から押しているところの断面図です。横からみると団子には垂直な太線が4本ありますが、これは直径の異なる2つの円筒形部分を着色したものの断面なのでそのように見えます。そしてこの状態で、平板を上から押すと、円筒形は上下部分よりも中間部分がより外側へ押し出され、先程の算盤玉のような形になります。即ち断面はくさび形となり、押される程にくさびの角度は小さくなり、最終的には地面とほぼ平行になるというわけです。ここからは独断ですが、円筒形の中間部分は外側それとも内側どちらに移動するかと言えば、当然抵抗の少ない外側になります。つまり外側の方が、押しのける生地の量が少なくてすむので、飛び出しやすいということです。で、結果として断面は算盤玉のようになると考えます。
実際の手打ちうどんでは、麺棒を使って生地を徐々に延ばしていきますが、この場合の圧延の模様はどうかと言えば、やはり上記の平板で押したときと同じになることが確認されています。その理由を敢えてこじつけるならば、麺棒で圧延するときは最終的に厚さを均一にするために、四方八方から巻きとり、圧延するので、結果として平板で押しつけるのと同じことになるということです。
実はさぬきでもある製麺機械メーカーが平板で圧延する製麺機を製作しています。最初これをみたときは、「あらまぁ、なんと原始的な!!」とびっくりしましたが、少なくとも生地の圧延の仕方としては、麺棒で延ばすのと同じ効果が得られることになります。よってこれもグルテン繊維が放射状に形成されるので、たとえ同じ幅にカットしても、ゆで上がりは太いのや細いの、またねじれたりしたのができることになり、手打ちうどんのような雰囲気がでることになります。