#235 (Q)ゆで時間短縮のコツはありますか?・・・その②

「ゆで時間に王道なし」というのが基本的なスタンスではありますが、敢えて無理を承知でゆで時間を短くする方法を考えてみたところ、ざっと次のようなものがありました:

①うどんを細く切る
当たり前です。細く切ることで、水分はうどんの中心に早く浸透し、それだけでんぷんが早く糊化されます。ただ細くし過ぎると、うどん独特のコシがなくなり、冷麦やそうめんみたいになるので限界があります。

②釜揚げ、釜抜きで食べる
ゆであがったうどんを、ゆで湯と一緒に丼にとり、つけ汁で食べるメニューを釜揚げうどんと言い、うどんだけを丼に「抜き出して」つゆをかけて食べるメニューを「釜抜き」、「釜出し」、「釜どり」などと言います。いずれにしても、水で締めないので、麺がもっちりとしているので、通常15分のところが10~12分でも食べられるようになります。

③加水率を上げる
加水率を上げると、生地が柔らかくなり、それだけ水分がうどん内部に浸透しやすくなります。その結果糊化が早く進みます。ただこれにも限界があります。これと逆のケースが乾麺のうどんです。乾麺は水分が14%程度と低いため(よって保存性が良いわけですが)、ゆでるときに水分が浸透しにくく、よってゆで時間が長くかかります。また乾麺は手打ちうどんに比べ、麺が細くて薄い傾向にありますが、これは太くするとゆで時間がかかり過ぎるからです。また余りに太いと、中心部分が糊化する前に表面が溶けてしまい、うまくゆであがりません。つまり乾麺の太さには限界があります。

④ タピオカでんぷんを加える
少し専門的になりますが、でんぷんが糊化する温度や速さは、でんぷんの種類によって異なります。そして「(4)小麦の話>(7)でんぷん」の下の方にあるグラフをみると、小麦でんぷんはそのグラフがだらだらと上がっているので、糊化するにかなり時間がかかることがわかります。一方、馬鈴薯でんぷんやタピオカでんぷんはグラフが一気に上がるので、早く糊化することがわかります。よってうどんの原料である小麦粉にこれらのでんぷんを混ぜてやるほど、糊化が早く進み、その結果ゆで時間が短縮されることになります。但し良いことばかりではありません。他のでんぷんを入れるということは、それだけ小麦粉が減るので、小麦粉本来の風味が薄れることになります。つまりうどんの味が薄くなります。

⑤塩を多くする(?)
一般に塩を多くすると、ゆで時間が短くなると言われています(#111)。理由は塩がお湯の中に溶け出し、お湯と置換するので、早くゆであがるというわけです。以前これが本当がどうか実験をしてみましたが、5分、10分、15分ゆでたもののどれも同じように「ぐにゅぐにゅ」するばかりで、個人的にはなかなか実感はできませんでした。しかし「加塩量が多くなるとゆで時間が短くなる」というのは、うどん業界では定説になっているようです。どなたか試されたら、是非結果をお知らせください。

⑥富士吉田うどん、武蔵野うどん、名古屋の味噌煮込みうどん風にゆで時間を短くする
何年か前に、富士吉田うどんをはしごして食べたときは確かに硬かったし、武蔵野うどんにしてもさぬきうどんに比べると、「まだゆであがってないのでは」と感じたこともあります。また味噌煮込みうどんに至っては、「鍋に投入したうどんが浮き上がってくればそれでいいんですよ」という過激なことを聞いたこともあります。特に象徴的なうどん屋さんは、武蔵野の「T」さんで、ここはうどんを鍋に投入してから打ち上げるまで、僅か2分程度という驚異的なゆで時間を目の当たりにしてびっくりしました。こうなるとうどんを啜るというよりも、ポッキーみたいに「かじる」といった表現の方がぴったりですが、それが不思議と旨いんです。ただこういったうどんは小麦でんぷんが充分に糊化してないので、調子にのって食べ過ぎると後でお腹が膨れるので注意してください。

以上ざっと気がつくままに「ゆで時間短縮法」を挙げてみましたが、さぬきうどん流の食べ方となると、まあ①、②、③あたりが常識的なところじゃないかと思います。