#238 10年を経過した乾麺は食べられるか?
加工食品、一口で言うと袋とか缶などに入っている食品には、大抵賞味期限が表示されています。中には「賞味期限」ではなくて「消費期限」なるものもありますが、その違いは簡単に言うと次のようなものです:
消費期限:弁当や生菓子など長く保存がきかない食品(一般に5日以内)に表示されています。表示されている保存方法に従って保存したときに、食べても安全な期限を表示しています。
賞味期限:ハム・ソーセージ、スナック菓子、乾麺、缶詰など冷蔵もしくは常温で、ある程度保存がきく食品に表示されています。賞味期限とは、一応おいしく食べられる期間のことです。
最近はこれらの表示を厳格に守り、一日でも過ぎると「絶対に食べない」と豪語する人もいますが、あまり杓子定規に考えると、大切な食料の浪費につながります。消費期限3日のお弁当ならまだしも、賞味期限1年の乾麺が、1日過ぎたから廃棄処分にするというのはいくら何でもやり過ぎのような気がします。そこで今回は乾麺の消費期限について考えてみたいと思います。乾麺の賞味期限といえば、一般には1~2年です。最近では調理時間が長いとか手間がかかるとの理由で、カップ麺やインスタント食品にやや押され気味の乾麺ではありますが、その味および賞味期限の長さにおいては食品の中では超優等生です。
もし賞味期限1年間の乾麺が、表示の通りの保存方法に従って保存されたものであるなら、たとえ366日経過したものでも、大抵の人は抵抗なくそのまま調理すると思います。13ヶ月経過したものでも同様でしょう。しかし1年半とか2年経過すると、外見や品質に問題なくても、だんだんと敬遠する人がでてくるでしょう。そこで資料はかなり古いですけど、興味深い記事を見つけたのでここにご紹介します。出典は今から遡ること30年、昭和55年(1980)10月25日発行の全乾麺新聞です:
全乾麺に、ある消費者から10年以上家庭で保存した乾麺が届けられたので、日本穀物検査協会中央研究所に依頼して品位テストを行った結果は次の通りだった。
「外観は色が若干くすんではいるものの、かび及び虫の発生も見られず、めん線の状態も良好であったことは、保存条件が非常に良好であったことに起因するものであるが、食に充分に供し得る状態であった。乾麺が保存食品、備蓄食品としての使命を充分に果たし得るものといえよう」
『昭和55年(1980) 10月25日全乾麺新聞』
いかにも時代を感じさせる硬い表現ではありますが、結局のところ保存状態さえよければ乾麺の賞味期限はいくらでも延びるということがわかります。よって皆さんも押し入れの中に古い乾麺を見つけても、むやみに廃棄処分にしないようにお願いいたします。ところで乾麺の賞味期限は1~2年とかなり幅がありますが、これは正確には、そば、うどん、きしめんは1年、ひやむぎは1年半、そしてそうめんは2年が目安になっていて、補足すると次のようになります。
乾麺類の貯蔵試験を色々試した結果、貯蔵変化が食味に与える影響が、太いめんはマイナスに、細いめんはプラスにと正反対に現れることが認められたために、異なる賞味期限が設定されています。つまり細い麺の場合、時間の経過と共に食感が向上すると言われています。冬季に製造されたそうめんが、梅雨時期を経過して、コシコシした食感になることを「厄(やく)」といいますが同じことです。一般には乾麺は時間が経過するほど、麺が締まってくるので、結果として細いそうめんであれば「コシコシ」とプラスに感じるものが、太いうどんの場合硬くて粘弾性に乏しいと逆に評価される傾向にあるからです。何れにしても適切に保存された乾麺であれば少々賞味期限が過ぎても全く品質には問題はありません。