#253 新商品のご紹介・・・ブラウワー
小麦は胚乳(85%)、表皮(13%)、胚芽(2%)の3つの部位からできています。小麦粉はこの中の胚乳部分を取り出したもので、製粉工程において小麦粉にならない表皮及び胚芽は「小麦ふすま」として処理されます。小麦ふすまの主要成分はセルロースやヘミセルロースといった不溶性食物繊維ですが、これ以外にも鉄分、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、銅などのミネラルやビタミンが豊富に含まれています。
不溶性の食物繊維は水分をたくさん吸収するので、便のカサを増して柔らかくし、スムーズに排泄する働きがあります。つまり小麦ふすまには便秘の予防や改善の効果があり、言わば胃腸をきれいにしてくれるお腹の清掃人で、この事実は古代ギリシアのヒポクラテスの時代から知られていました。また最近では動脈硬化、糖尿病、大腸がんなど生活習慣病の予防にも効果があることがわかってきました(#245)。そして国際穀物科学技術協会(ICC)も、小麦ふすまが私たちの食生活において最も理想的かつ効果的な食物繊維であるということを認めています。
このように小麦ふすまには多くの栄養素が含まれているにもかかわらず(#240)、現在そのほとんどは家畜のエサつまり飼料として利用されています。理由は簡単で、小麦ふすまは単純に美味しくないため、食用には向かないからです。食品には「美味しさ」、「栄養」、「廉価性」また最近では「簡便性」といった様々な条件が求められますが、「飽食の時代」である現在では、なんといっても美味しくないと市場には受け入れてもらえません。
現在の食生活においては、小麦を丸ごと製粉してできた「全粒粉」は、通常の小麦粉に比べて、栄養価的に優れているのは事実です。しかし全粒粉は市場にはそれほど流通していません。それは誰もがその価値をわかっていても、全粒粉だけで焼いたパンは、「充分に膨らまないのでふんわり感がない」とか「小麦臭さが気になる」と感じることが多く、結局は普通の小麦粉で焼いたパンの方を選択してしまうからです。
前置きが長くなりましたが、実はこの小麦ふすまを何とかおいしく調理できる方法はないものかと、なんとなく考えていました。それであれこれ思案するうちに全粒粉が食べにくいのは、表皮部分が細かく粉砕され過ぎるのがひとつの原因でないかと考えました。
一例を挙げると、開封したてのシリアルはサクサクしていますが、底の方になってくると最初の頃の美味しさはだんだんと薄れてきます。これは湿気ることも一因でしょうが、それ以上にシリアルの形状が影響していると考えました。つまり上部には大きな塊が多いけれど、逆に底の方は細かい破片や粉っけばかりになるから食味が劣化するんじゃないか、と。
よって小麦ふすまも、微粉砕するよりもある程度の大きさに留めておく方が食感が良いだろうと考え、そのサイズを色々変えて試してみました。具体的には小麦粉部分は従来通り製粉し、表皮のふすま部分だけをできるだけ粗く製粉して、後で両者を混ぜあわせてみました。これは考え方としてはグラハム粉(#246)に近い気もしますが、実際にできあがった粉はかなり異なります。これでパンを焼いてみたところ、小麦粉だけのものより噛み締めがあり、風味も強く、もちろん食物繊維もたっぷり入っています。
これまでホームベーカリーで焼いたこのパンを、毎朝判で捺したように1年以上食べ続けていますが未だに飽きません。個人的には結構いい線に仕上がったと思ったので、この際いっそうのこと商品化してみて、皆さんのご判断を仰ぎたいと考えるに至りました。小麦の食物繊維にご関心のある方は一度お試しになってみてください。蛇足ながら商品名は小麦ふすま(ブラン=bran)がたっぷり入った小麦粉(フラワー=flour)という意味を込めてブラウワー(brour)としました。