#258全粒粉による血圧低減効果・・・①
全粒粉の効用については、新着情報#245「ほどほど健康術」でも少しご紹介しましたが、先日新しい研究成果が報告されました。これはイギリスのアバディーン大学のグループが行った研究で、最初2010年8月にAmerican Journal of Clinical Nutrition誌(「アメリカ臨床栄養会誌」みたいなカンジでしょうか)のインターネット版に発表されました。
論文のタイトルは「中年世代における全粒粉摂取による血圧低減効果および心臓疾患リスクの減少」。高血圧は心臓や腎臓疾患、そして脳卒中のリスクを高めることが知られていますが、論文の概要は「全粒粉を毎日食べると血圧が下がり、よって心臓疾患のリスクも減少しますよ」という内容です。以下その概略をご紹介いたします。
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40~65歳の年齢層から233名のボランティアを募った。この人達は概ね健常者だが、BMI指数が18.5~35の範囲から抽出されたため、かなりの肥満体型の人も含まれ、また普段はほとんど身体を動かさない人もいる。但し心臓疾患、高血圧、高コレステロール、及び糖尿病を患っている人達、また逆に既に全粒穀物を常食にしている人達は今回の趣旨にそぐわないので、予め除外されている。次にこの被験者全てに対して、同じ精製食品(例えば真っ白なパン)を4週間続けて摂取してもらった。
その後、被験者たちを無作為に下のような3つのグループに分けて、それぞれ12週間に及ぶ調査を実施した。途中27名は何らかの理由で棄権したため、最終的には206名に対しての結果が得られた。
グループ①:引き続き精製食品だけを摂取(対照群)。
グループ②:精製食品に代わり「小麦全粒粉パン70-80g+小麦全粒粉シリアル30-40g」を毎日摂取。
グループ③:精製食品に代わり「小麦全粒粉30-40g + オート麦全粒粉70-80g」を毎日摂取。
それぞれ別メニューの食事をしてもらい、6週間経過した段階でグループ③においては、被験者たちの最高血圧は平均して5ポイント減少し、12週間後には6ポイントの減少が認められた。同様にグループ②においては、6週間後に3ポイント、そして12週間後には、5ポイントの減少が認められた。一方グループ①においては目立った変化はなかった。ただ最低血圧については全てのグループにおいて目立った変化は認められなかった。
その他、病気の指標となるような血糖値、中性脂肪、C反応性タンパクなどの値に変化はなかった。また体重の変化とか塩分摂取量の変化など血圧に影響を与えるような他の要因は認められなかったので、全粒粉の摂取(主として食物繊維)が血圧の低下要因であると考えられる。つまり全粒穀物を毎日摂取することによって血圧が下がり、それにより冠動脈疾患や脳卒中の発生率をそれぞれ15%、25%減少させることができる。
参考文献)
Effect of increased consumption of whole-grain foods on blood pressure and other cardiovascular risk markers in healthy middle-aged persons: a randomized controlled trial.
Division of Applied Medicine, University of Aberdeen, Aberdeen, United Kingdom