#264 2010年今年の三大ニュース

今年も残すところ僅かとなり、慌ただしい時間をお過ごしのことと思います。昨年最後の新着情報(#217)をみると、2010年の予算規模が史上最大の92.3兆円になり、なんとか健全経営に戻ってほしいとあります。そして一年後、その淡い願いは叶わず、今年の予算も92.4兆円と記録を更新し、赤字国債は44兆円、日本は財政破綻に向かいまっしぐらの様相を呈しています。現政権が選挙時に掲げたマニフェストは一体何だったんでしょうと、素人ながらも言いたい気持ちでいっぱいです。
ところで今年も業界三大ニュースを独断でまとめてみました。実は突然振って湧いたTPP問題は農業、食品産業、そして二次加工産業分野に激震をもたらすと言われていますが、実際にはまだ協議が開始されたわけではありませんので、敢えて今年のニュースからは除外しました。

①ロシアの小麦輸出禁止措置
今年のロシアは干ばつに見舞われ、小麦が大凶作になりました。それを受けてプーチン首相は8月5日、小麦などの穀物輸出を12月末日まで禁止すると発表しました(その後、2011年6月30日まで禁輸延長発表)。これをきっかけに安定していた小麦価格は上昇を始め、来年4月の価格改定ではかなりの上昇が避けられない状況です。前回、小麦相場が高騰した2008年の悪夢が脳裏をかすめますが、何とかその二の舞は避けたいところです。

実は、昨年ロシアのスクルインニク農相は、日本への小麦輸出を本格的に開始する方針を明らかにしたばかりで、今後ロシア極東で輸出拠点を建設し、年間で最大150万トンの小麦を輸出する計画でした。ところが一転このような結果になってしまい、何とも言えない気持ちですが、穀物は天候に左右されるものだけに、その予測は難しいものがあります。ただ自国の食糧を割いてまで、輸出してくれる国はありません。現在、先進国中最低の食糧自給率に危機感を感じ、それを上げようという機運は感じますが、ただ問題は生産効率の悪い農業分野に皆さんがどれだけ応分の負担(つまり補助金です)をできる覚悟があるのかがカギになりそうです。

②西オーストラリアの干ばつ
オーストラリアは毎年平均して2000万tの小麦が収穫され、今年も2300万tと数字の上では豊作でした。ただ西オーストラリアは大干ばつで、昨年は830万tのところが、今年は半分以下の400万tでした。特に、うどんに適しているといわれる「ヌードル小麦」の出来が悪く、日本向けASW用に充分な量が確保できないと言われています。よって来年から入港するオーストラリア小麦の品質が変わらないかどうか心配です。

③即時売却方式の導入
これは単に小麦の売却制度の変更なので、一般の消費者の皆さんには影響はありません。現在、日本で製粉される小麦の総量は年間おそよ600万t。その内500万tは輸入小麦で、それは国家貿易によって運営されています。つまり製粉会社は毎月必要な量の小麦を農水省から売却してもらっています。そして従来は国が常に一定量の小麦在庫(国家備蓄)をもって運営していましたが、この10月からは国は一切備蓄を持たず、各製粉会社毎に管理することになりました。つまり輸入された小麦は直ちに、国から製粉会社に売却されるようになったので、この制度のことを「即時売却方式」と呼んでいます。

現在この制度が始まって3ヶ月経過しましたが、一番の問題は売却月(製粉会社にとっては購入月)の4ヶ月前に注文しないといけない点です。つまり来年4月に購入する小麦は、この12月に注文する必要があります。一定量の備蓄を確保してはいるものの、4ヶ月先の需要を見越して注文するのはそう簡単ではありません、というか至難の業です。

少し重たい話題ばかりになりましたが、それではみなさん、どうか良い歳をお迎えください。