#267 2010年度産オーストラリア小麦の作況

オーストラリア(以下豪州)は昨年に引き続き、今年も東部地域が集中豪雨に見舞われ、クイーンズランズ州の州都ブリスベンは大きな被害にあいました。謹んでお見舞い申し上げます。ただ素人が勝手に思うところではありますが、豪州といえば広大な平地をイメージするので、洪水なんてそう安々とは起こりそうにないような気がしますが、世の中本当に何が起こるかわかりません。一方西部地域は2年連続して干ばつに見舞われ、小麦の作況に大きな影響を及ぼしました。東部は集中豪雨、西部は干ばつと聞けば、「豪州はやっぱり広い!」と改めて実感せざるを得ません。

ところで、ここで現在の豪州の小麦状況について少し説明させていただきます。豪州の小麦生産地域は東西に分かれていて、どちらも適度な降雨のある南部に集中しています(画像参照)。ただ東西では栽培される品種が異なり、東豪州はパンやラーメン用に適した、比較的たんぱく質の多い強力小麦が主体であるのに対し、西豪州はうどんなど麺用に適したヌードル小麦が栽培されています。で、当然ですけど豪州の小麦の生産量は、東豪州と西豪州との生産量の合計になります。これを基に下の小麦生産量の推移をご覧ください。

ざっとみて豪州の年間生産量は、2000万tあたりが平均で、これを超えると豊作ということになります。そして今期(2010-11期)は2500万tを超えているので大豊作なのですが、この青色と赤色の比率が極端に違っています。つまり東部は大豊作、そして西部は干ばつのために大凶作となっています。実は前回2007年には世界的に小麦が不作となり、小麦価格が暴騰しましたが、このときでも西豪州では500万t以上生産され、少なくとも麺用小麦については量的にも品質的にも問題はありませんでした(残念ながら価格は上昇しましたが)。しかし今回は393万tとここ10年以内で最も少なく、少し事情が異なります。

日本向け麺用小麦ASW(オーストラリアン・スタンダード・ホワイト)は現在、ANW (Australian Noodle Wheat)とAPW (Australian Premium White)という銘柄を一定の比率で混合したものです(具体的な数字は控えますがご了承ください)。ANWは直訳するとオーストラリア・ヌードル小麦つまりオーストラリア麺用小麦で、APWはオーストラリア・プレミアム・ホワイト、つまりオーストラリア上級白小麦といったところでしょうか。そしてその用途で言えば、ANWは和風麺用、そしてAPWはすべての麺やパンに使用可能な、言ってみれば汎用的な小麦です。

簡単にどういうことかと言えば、日本向けASWという小麦の銘柄を和風麺用的な味付けをしようとすれば、このANWという銘柄が欠かせないということです。そして話は最初に戻ります。このANWは西豪州でしか生産されていなくて、今年は大干ばつのためにこのANWの生産量が極端に少ないのです。どの位少ないかといえば、日本向けASWを従来通りの比率で供給するだけの充分なANWが確保できないかも知れないということです。よって今年、豪州から輸入されるASWは例年と比べて少し性質が異なる可能性があり、よってそれは小麦粉へも何らかの影響があると思います。ただその辺りは小麦品種の振替え、および製粉方法でなんとか回避したいと考えていますので、何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。