#271 でんぷんの性質その①・・でんぷんの粘度曲線(アミログラム)

小麦粉に含まれる成分のうち一番多いのが70%以上を占めるでんぷんです(#193)。うどんが切れずに繋がっていることができるその「つなぎ力」は、ゆでる前はグルテンの力、そしてゆでた後は「でんぷんの糊化」によるものです。具体的にはゆでる前は、活性グルテンの力により、伸びたり縮んだり、また曲がったりしますが、この粘弾性によってうどんは繋がっています。そしてゆでて加熱されると、グルテンは失活して硬直し、でんぷんは糊化してつなぎ力をもつようになります。つまり「つなぎ力」の主体は、グルテンからでんぷんに移ります。

糊化に関しては、でんぷんの項目で紹介していますが、復習の意味も兼ねて改めて説明させていただきます。でんぷんはブトウ糖が繋がってできた炭水化物で、そのまま水と混ぜあわせても何の「つなぎ力」ももちませんが(#193)、加熱することによって、だんだんと粘りがでてきます。順序立てて説明すると次のようになります。でんぷんの粒はある温度に達すると水を吸収して膨らみ始めます(膨潤)。そして加熱を続けると、更に膨張し続け、最終的には吸水することによって体積は元の数倍に膨らみます。ではもうこれ以上膨れることができなくなったとき、加熱し続けるとどうなるか?それは風船と同じで破裂してしまい(破壊)、バラバラになってしまいます(分散)。

つまりでんぷん粒は加熱することによって、「吸水⇒膨潤⇒崩壊⇒分散」の過程をたどり、この一連の流れを「でんぷんの糊化現象」といいます。昔は障子を張り替えるとき、小麦粉を水に溶いて加熱したものを糊の代用として使用していましたが、これはでんぷんの糊化現象を利用したものです。でんぷん粒は膨れるにつれて粘度が大きくなりますが、崩壊によって一気に下がります。つまり水に溶いた小麦粉をかき混ぜながら加熱し続けると、その抵抗はだんだんと大きくなりますが、あるときを境にサラサラ状態になります。これがでんぷん粒が崩壊した状態です。

このときの粘度の変化をグラフにしたのが右上図です。どの小麦粉も、つまりどのでんぷんも似たような形のカーブ(粘度曲線)を描きますが、それぞれ少しずつ異なります。また同じ小麦粉であっても、加える水の量や加熱方法の違いによって、当然粘度は異なってきます。よってそれぞれの小麦粉の粘度曲線を、正確にまた客観的に計測できるようなルールを作っておく必要があります。そこで現在ではドイツのブラベンダー社が開発したアミログラフをいう計測機械を使用するのが一般的です。

この測定方法は次のようなものです。最初に水450mlに小麦粉65gを加え、それを攪拌しながら一定の割合で温度を上げていきます。温度が60℃になるとでんぷん粒が急激に膨張を開始し、ここが糊化開始点とよばれています。更に攪拌と加熱を続けながら、94.5℃まで上昇すると、今度はこの温度を保ったまま攪拌を続けます。しばらくするとてんぷん粒が崩壊するので粘度が低下し始めます。つまりそれまでねばねば、ドロドロだったものがサラサラに変わります。この現象をブレークダウンといい、サラサラになった状態での粘度をブレークダウン粘度、そしてピーク粘度(最高粘度)とブレークダウン粘度との差のこともブレークダウンといいます(画像参照)。蛇足ながら粘度の単位はBU(ブラベンダーユニット)といいますが、これはブラベンダー社が自分で決めたものです。