#315 古代米うどんテイスティング

平成の大合併により、香川県の市町村も再編され、耳慣れない市や町が誕生しました。合併後かなりの時間が経過したにも拘らず、未だに新地名がしっくりせず、旧名の方がずっと分かりやすいのは、齢のせいかも知れません。日本一狭い香川県でもこれだけ戸惑っているのだから(私だけかも)、他府県の方々はさぞかしご苦労なさっていることとご察しいたします。で、香川県は大合併により従来の5市38町から8市9町へと、かなりすっきりしましたが、それでもまだ9町ががんばっています。そしてここ坂出市の西隣リにある宇多津町は、その中のひとつです。

宇多津町は、かつては全国屈指の塩田の街でしたが、時代の流れで塩田は昭和47年までに全て廃止されました。しかしその後はその広大な塩田跡地を造成し、近代的な街に変貌を遂げ、人口僅か17,400人ながら、香川県の中においてはその存在感を示しています。高齢化率(人口65歳以上が占める割合)は15.54%と香川県全体の20.65%を大きく下回っている若い街です。また町が率先して町おこしを主導し、伝統の塩を使った塩キャラメルや、町内の農家で生産している古代米なども販売しています。

さて前置きが長くなりましたが、宇多津町ではこの度町の活性化及び地産地消を更に推進するために、現在町内で生産している古代米の、更なる販売展開を図っています。

具体的には古代米単体で販売するだけでなく、加工品としての利用も推進しましょうということで、既に古代米酒(アルコール飲料)は実用販売しています。そしてその次の展開としてうどんに白羽の矢が立ち、この度乾麺を試作することになりました。使用する古代米は「朝紫(あさむらさき)」と「紫黒苑(しこくえん)」の2種類。どちらも名前の通り、きれいな紫色ですが、後者の方が深いというか濃い紫色です。

粉砕した古代米の混合割合がわからんので、取り敢えず他の事例などを参考に10%を練り込んでみました。そういえば以前頂いた乾麺の中に黒米うどんがあったことを思い出しました(#287)。乾麺の状態では、どちらもきれいな紫色で、もとの粉末の色をそのまま再現しています。10%程度の混入率では、もう少し薄い色合いになるのかと思いましたが効果絶大です。そしてゆでた状態では更にその傾向が強く、②朝紫は蕎麦のようなカンジで良好でしたが、③紫黒苑はイカスミとまではいかないまでも、かなり濃い目で、日頃白い乾麺を食べ慣れている者とっては、ちょっと抵抗がありました。③なら5%でも十分かもしれません。

さて肝心のテイスティングは社内の4人でやりました。4人共通の感想としては、毎日食べるのであれば①小麦粉100%、偶にであれば②朝紫も面白いであろうということになりました。実はうどんに小麦粉以外の食材を練り込んで、新商品を作ろうという試みはこれまで既にやり尽くされた感があります。梅、しそ、人参、イカスミ、わかめ、ピーマン(?)、モロヘイヤ、また変わったところではこんにゃく・・・。しかしこれまで定番商品として存続しているものはほとんどなく、これは量販店の乾麺コーナーを見てもおわかりのことと思います。

その理由としては、乾麺はお米と同じ主食としての位置づけなので、うどん自体に味がついていると、回を重ねる内にくどく感じたり、飽きたりするからではないかと考えます。いくら美味しい炊き込みごはんでも、一日3度ならきっと閉口するでしょう。

先日ある豆腐メーカーの方とのお話では、豆腐もありとあらゆる食材を練り込んで新商品開発を試みたものの、現在かろうじて市場に認知されているのは胡麻豆腐だけ。しかもその流通量は、通常の白い豆腐とは比べるべくもないとのことでした。だからうどんも、お米と同じように前面に出てくるのではなく、噛んだときに一呼吸遅れて、微かに小麦の風味が感じられる程度の謙虚な味覚の方が、毎日飽きずに食べられるのではないかと思います。