#316 讃岐うどん熱き戦い

讃岐(香川県)にあるうどん店は700店とも800店とも言われていますが、詳細はよくわかりません。もちろんイエローページでうどん店を数え上げれば、それなりの数はでてきますが、何しろ沢山あるので常に、新規オープンや廃業など新陳代謝を繰り返しています。またうどんを提供しているのはうどん専門店だけに限りません。他にも製麺所、食堂、カラオケ、喫茶店など多岐に渡り、こういったお店も含めるとすれば、広義の意味でのうどん店はかなりの数になると思います。

ただ1960年代には3000~3500店のうどん店があったと言われ、これは現在のざっと4程度でしょうか。この数字がどの位すごいかというと、コンビニと比較すればよくわかります。香川でもここ数年コンビニがかなり増えましたが、それでも数百店舗程度と、当時のうどん店の数とはゼロが1個違うのです。昔はそれほど沢山あったのです。当時のうどん屋さんは、小規模の玉卸をしている製麺所がほとんどで、機械といっても精々ミキサーぐらい、後は殆ど手作業でした。よって1店あたりの生産量は知れています。でもだからこそ手打ち式でそれだけ旨かったと思います。

 

現在の新店の多くはセルフ形式ですが、これはこういった製麺所の軒先で「ここで、うどん食べさせてくれんな!」という声に応えて始まったと言われ、讃岐うどんセルフ第1号店は、今はなき㈲久保製麺でした(#073)。こういったうどん店は、できたてを直ぐに食べさせてくれるので、味は文句なく、また価格も安いので、当然流行りました。しかし良心的小規模経営は、効率が悪く、徐々に大手の製麺会社に押され、廃業が目立つようになります。消費者が本当に食べたいのは、こういった小規模製麺所のできたてうどんですが、今は量販店も大型化し、冷陳ケースにはどこも似たようなうどんばかりが並んでいるのは、ちょっと淋しい気もします。

最近ではここ坂出でも老舗中の老舗である彦江製麺所が2010年10月30日をもって閉店しましたが、こういった雰囲気のある製麺所がなくなるのは本当に見るに忍びないものです。このように香川県に沢山のうどん屋さんがあるのは事実ですが、大きな流れとしては、時代と共に減少傾向にあります。そして新店は少しずつ規模が大きく、そして多店舗化の傾向にあります。つまり同じ屋号のセルフ店が県内に点在するようになりました。そして2012年1月11日には、ついに現在うどんチェーン店では全国#1のM製麺が香川県1号店をオープンさせました。これは地元新聞でも結構大きな記事として取り上げられ、掲題の「讃岐うどん熱き戦い」とは、地元のうどん店がこの県外大規模チェーン店の讃岐への進出を迎え撃つといった内容の記事のタイトルです。

全国展開する大手のうどんチェーン店といえば、いくつかありますが、これまで同一屋号で300店舗を超えたところはありませんでした。しかしM製麺は現在既に500店舗を超え、その勢いがわかろうというものです。香川へは47都道府県中最後と、満を持しての進出になっただけに、関係者一同の注目は否が応でも高まり、今後の動向がとっても気になるところです。一部には「かけうどんの280円は、さぬきの感覚からするとちょっと高いなぁ!」という声はあるものの、そのハイパフォーマンスは他店舗で実証済みですので、今後どうなるか、こればかりは蓋を開けてみないことにはわかりません。

それにしても世の中、グローバリゼーションの影響で、全国どこへ行っても同じハンバーガーショップ、コーヒーショップ、牛丼ばかりが目につくようになりました。知らない街では、こういったチェーン店は安心して入れる利点はあるものの、反面地方の特長が消えてしまいそうで、少し残念でもあります。で、これはあくまでも個人的な好みではありますが、うどん屋といえば、やっぱりおでんを置いてある、昔ながらのお店が「ほっ」とできて好きです。

こういううどん店は、ゆっくりとうどんを堪能できるのでほっとします。

こういううどん店は、ゆっくりとうどんを堪能できるのでほっとします。