#345 穀物摂取量の推移
今度は過去50年間の私たち1人当たりの穀物摂取量(米、小麦、大麦)をグラフにしてみました(データは前回同様農水省HPからダウンロード)。表の見方は至って簡単ですが、ひとつだけ補足しておきます。この摂取量は可食部換算なので、加工前の重量とは異なります。例えば玄米は精米することによって、9%が米ぬかになります。つまり直近では米は92.4kg摂取していますが、これは玄米に換算すると92.4÷0.91=10.15kg程度になります。同様に小麦は78%が小麦粉で、残りは「小麦ふすま」となるので、32.7kgの小麦を摂取したということは小麦そのものに換算すると32.7÷0.78=41.9kgとなります。また大麦の歩留りは48%なので0.2÷0.48=0.42kgとなります。
さてグラフをみて象徴的なことは、お米の摂取量が114.9kg↓59.5kgと約半分に減ったことです。これはお米が美味しくないということではありません。お米は以前にも増して美味しくなったけれども、それ以上の食生活が多様化したと考えるべきでしょう。一世帯当りの米とパンに対する支出金額は、平成12年にはそれぞれ40,256円と27,512円だったものが、平成23年には27,428円と28,316円と逆転しました。勿論、お米は炊飯器で調理する必要があるのに対し、パンはそのまま食べることができるので、単純な比較はできませんが、これは実に象徴的な出来事です。
一方小麦は、25.8kgから32.7kgと30%程度増加していますが、ここ最近はほとんど横ばいです。ただお米と小麦粉、どちらも主要穀物ですが、お米は減少し、小麦粉は増えた理由は、その多機能性にあると思います。つまり小麦粉と一口に言っても、その用途はうどん、そうめん、ラーメンなどの麺類、ケーキやクッキーなどのお菓子、そしてピザやパンなど幅広く、その多用途性が小麦粉の消費が伸びた一番の理由だと思います。また小麦粉生産量の種類別の推移をみると、強力粉の伸びが178%と一番多く、これからパンやピザなどの消費が特に大きく伸びたことがわかります。
大麦は8.3kg↓0.2kgと大きく落ち込みました。1年で200gというのは、1日では僅か0.5gで、これはほとんど舐めているようなものです。昔はお米が高価だったので、麦ごはんといって、その中にいくらかの大麦をいれて調理していましたが、現在は健康食品としてごく一部の需要があるだけのようです。焼酎には前回みたように100万tほどの大麦が使用されていますが、これは加工用に分類されるため、食品としての大麦には換算されません。
主要穀物の合計(米+小麦+大麦)、摂取量は148.8kg↓92.4gと約2/3に減っていますが、勿論これによって私たちの摂取カロリーが減っているわけではありません。生活が豊かになるにつれ、主食よりも副食(おかず)の割合が多くなっただけの話です。よって現在の食生活は、摂取カロリーは多く、またその栄養バランスは余り好ましいものではありません。これは次の供給熱量の推移をみると明らかです。
昭和35年から平成22年の間に、1人当たりの供給熱量は2,291kcal↑2,458kcalと7%の増加になっていますがその内訳は大きく異なります。お米は1,106kcal↓580kcalと半分になりましたが、その代わりに畜産物と油脂類が増えています。つまり(米+畜産物+油脂類)の合計熱量はほとんど変わっていません。運動不足に加え、こういった動物性たんぱく質や脂質の取り過ぎが、糖尿病などの成人病を引き起こすわけで、決してうどんの食べ過ぎが成人病の原因ではありません(#303)。現在、医療費は増加の一途を辿っています。しかも加速する高齢化はそれに拍車をかけています。なんとか食事のバランスを適正化したいものです。