#346 香川県の小麦生産量の推移
#344でご紹介したように、近年国産小麦の生産量は100万t未満で推移しています。自給率が40%を割り込んでいる現状をなんとか回復させるため、当面の小麦生産量の目標を180万tとしていますが、補助金額が充分ではないせいか、増産は思うように進んでいません。ところで国内の小麦の主産地といえば、北海道がダントツで全体の60%以上、それに続くのが九州で、両者合わせると80%以上になります。北海道や九州は、一枚の畑が広く、国内では耕作条件が良好なためです。
次のグラフは香川県で小麦の作付面積と生産量の推移です。今では信じられませんが、香川県も昭和36年には54,000tも生産していましたが、その後は輸入小麦に押されっぱなしです。平成元年頃には一時的に盛り返しはしましたが、ここ数年は5,000t前後で推移しています。グラフの左の方に、緑の棒線が極端に短い年がありますが、これは大凶作の年です。今から50年程前の昭和38年は、記録的な多雨で、ほとんど収穫されませんでした。このように農作物は、自然相手なので栽培は難しく、今後もこういう極端な不作が起きる可能性はあります。尚、当時の状況は次のように記述されています。
“昭和38年の麦は降り続く雨によって壊滅的な痛手を受けた。出穂期から降り始めた雨は6月10日まで、57日間続き、降水日数47日、 残り10日が曇天という異常さで、陽をみることはほとんどなく、この期間の降水量は582mmと本県年間雨量の半分に達した。このため、麦は登熟期に変色腐敗し、前年比8%と収穫皆無の状況で、苦労して刈り取った麦も発芽や腐敗で家畜の餌にもできない惨憺たるものとなった。”
ところで現在「さぬきうとん」は、「うどん県」という愛称により香川県あげてのご支援をいただいています。全国的に地方が地盤沈下する中、「さぬきうどん」は地域活性化のための数少ない有効的手段であることは疑いの余地のないところでしょう。一部には「さぬきうどん」だけが厚遇されているとの辛口の意見も耳にしますが、実際のところ、さぬきうどんを呼び水として、地域の活性化を図るのが一番効率的かつ効果的な手段です。
そしてこのうどん県において、中心的な役割を担うのが、改めて言うまでもなく香川県産オリジナル小麦である「さぬきの夢」です。現在の生産量5000tというのは、金額ベースでは数億円と香川県農業全体に占める割合は絶大というわけではありません。しかし香川経済における存在感そして貢献度という点では文句なくナンバーワンの農産物であることは間違いありません。
また今年の作付けからは新品種「さぬきの夢2009」に全面切り替えとなることから、更なる需要増が見込まれます。具体的にはグルテンの粘弾性向上により、うどんの作業適性が向上し、従来以上にうどん専門店での使用が期待されること。また同様の理由で、これまでは需要が限定的であった手延そうめんにおいても期待度が大きく、一旦この分野において使用されると、かなりの量の需要増が見込まれます。
ただ期待度及び貢献度抜群の「さぬきの夢」ではありますが、前途は順風満帆というわけではありません。現在の「さぬきの夢」の生産量5000tは小麦粉に換算すると3000t程度、そしてこれは現在のさぬきうどん生産量60000tにおける5%にしか過ぎません。うどん県を標榜するからには、将来的には少なくとも全需要の少なくとも10%は生産したいところであります。よってその前段階として当面の生産目標である8000tは何としても達成したいところです。これからも「さぬきの夢」をよろしくお願いします。