#354 うどん屋のおでんはなくなるのか?
さぬきうどんに付き物といえばおでんです。大抵のうどん屋さんには、レジ横におでん鍋があり、そこには色んなおでんが並んでいます。うどんを注文して待ってる間につつくおでんの味はなんとも言えません。私も偶に好きなうどん屋さんで、釜揚げうどんを注文したときには、釜入れのタイミングで待ち時間が大小しますが、いずれにしても待つ間のおでんとビールの組合せは最高です。豆腐、玉子、つくね、こんにゃくなどが好物で、中でも豆腐は外せません。
これは個人の勝手な見解ですが、これまでおでんはうどん屋さんにとっては、重要な収入源のひとつだと思っていました。というのはセルフのうどん店ならうどん一杯が150~180円であるのに対し、おでんは大体100円前後なので、2本とると、うどんより高額になるからです。ですから「おでん」とか「おむすび」なんかのサイドメニューを充実させることによって、客単価は上がり、お店の収益を上げるものと思い込んでいました。
ところが先日あるうどん屋さんとお話していると、そこのご主人が突然、「実はうち、今度からおでんするの、止めたんや」と仰るので、「なんでですか?」と思わず聞き返しました。ご主人の説明によると、おでんを提供するのは、結構手間暇かかるらしく、仕込み、補充、売れ残ったときの処理などトータルで考えると、結局専任の担当者がほぼ一人必要になるそうです。一方それに対し売上げは、サイドメニューなのでうどんそのものには到底及ばず、収支を考えると結局のところ、「手間ばっかりかかって、するのが面倒くさいんで止めた!」ということになったようです。
しかしよくよく考えてみると、従来はサイドメニューとして、その地位を確立していたおでんが、なぜ売れなくなったのか?その真の理由は、ぬきうどんの形態がセルフ店にシフトしたことが影響しているようです。旧来のフルサービスのうどん屋であれば、注文してからうどんがくるまでの間が手持ち無沙汰になるので、「ちょっと、おでんでも食べようか」となるところです。でもセルフ店では待ち時間ゼロなので、それだけおでんの登場機会が減ったんだと、そのご主人は仰っていました。言われてみれば、おでんはうどん屋さんでの潤滑油のような役割も果たしていたような気がします。
別のセルフのうどん屋さんは、数年前におでんの販売を中止したそうです。お客さんに「おでんはないんですか?」と聞かれると、近くのコンビニを紹介するそうです。セルフ店は、うどんのコストパフォーマンスを追求し、ギリギリのところで勝負している結果、非効率的なおでんを提供し続ける余裕がなくなりつつあります。そして食べ終わるとすぐに退席を促されるような雰囲気は、ますますおでんを遠ざけるという悪循環になっているように思えます。
それだけにゆっくりとおでんを食べることができ、じっくりとうどんを味わえるうどん屋さんは貴重で、そういうお店に入ると、ほっとします。そば屋さんのように、のんびりとくつろげるうどん屋さんがもっとたくさんあったらいいなあ、とつくづく思います。