#381 平成25年度産「さぬきの夢」

今年もさぬきでは小麦の収穫がほぼ終了しました。これまで何度もご紹介したように、香川県で耕作されている小麦品種は、今年度収穫(H25)分から全て「さぬきの夢2009」になります。紛らわしくて申し訳ありませんが、実際に耕作されている小麦品種が「さぬきの夢2009」、そして香川県で開発される小麦品種の総称が「さぬきの夢」。更には今後市場で目にするうどんの包材などは全て「さぬきの夢」で統一されることになります。

さて今年(H25)の「さぬきの夢」の出来栄えは、結論から言うとまずまず良好であったようです。最終的な数字はまだでていませんが、収穫適期の天候に恵まれ品質は良好のようです。実は播種適期である昨年11月中下旬においては、断続的に降雨があり、その結果土壌条件は悪く、播種面積は前年と比較してやや減少の、1406haとなりました。そしてその後の低温も影響し、出芽や生育がかなり遅れたので、一時はどうなるのかと心配でした。

しかし今季は、幸い凍霜害も見られず、4月の気温は平均並みで推移し、出穂及び開花も順調に進みました。そして何より5月から収穫の6月初めにかけては、高温及び乾燥傾向で推移したことが高品質につながりそうです。小麦は何といっても、収穫適期の降雨ほど、品質に悪影響を与えるものはありません。収穫前に長雨にたたられると、穂発芽といって穂の状態から芽をだすことがありますが、そうなると品質が著しく劣化するのです。今年は平年よりも梅雨入りは早かったのですが、これまでは空梅雨気味に推移しているので、これが何より良かったようです。

収穫直前の「さぬきの夢」

現在、香川県では2種類の麦、はだか麦(大麦)と小麦を、主に水田の裏作として耕作しています(#285)。我々としては、農家の方にはできれば小麦をより多く耕作していただきたいのですが、両者ともに一長一短があるので、なかなかこちらの思惑通りにはいきません。例えば、はだか麦は小麦よりも収穫適期が1~2週間早いので、それだけ梅雨の影響を受けにくく、またそれだけ早く田植えの準備に取りかかれることができます。しかしそれ以外に価格、反収、地域性など色んな要素が絡んでくるので、一概には決められないようです。

より良い小麦を目指しての品種開発は、現在ももちろん続けられています。日本のように収穫適期に梅雨がかかる心配のある地域では、一日でも早く収穫できる小麦品種がより望まれています。しかし実際の品種開発の道のりは私たちが考えるよりもずっと大変です。

先日聞いた話ですが、結局のところ小麦は出穂(しゅっすい)、つまり穂が出てから収穫までの期間に光合成を行うわけですが、その効率を上げるのが至難の業で、収穫適期を1日縮めるために、なんと30年もの研究開発期間がかかるそうです。それでは早く種を蒔いて、早く穂をだすようにすればいいじゃないか、と私のような素人は考えますが、余り早く穂がでても凍霜害に遭いやすく、結局のところ出穂期から収穫適期までの期間を如何に短縮できるかが、ポイントであると理解しました。

また手っ取り早く、他産地の優秀な小麦をそのまま持って来て工作したらいいではないか、と素人は更に発想しますが、問題はそんなに簡単ではなく、オーストラリアのASWを香川で栽培しても、病害虫や降雨に弱いなどの理由で、うまくはいかないようです。つまり小麦の品種というのは、その気候、土地柄にあったものではないと、うまくいかないということのようです。

話は戻りますが、「さぬきの夢2009」という品種は穂が長く、反収も良好で、今年は330kg/10a位は獲れているのではないかということです。よって皮算用では1406ha×330×10=4,639tということになりますが、実際の数字が判明するのはもう少し先になります。いずれにしても、無事収穫が終了し、ほっとしました。