#523 うどん学2016@香川大学
東京と地方との格差は拡がる一方ですが、地方間格差も除々に進行中です。天声人語(#517)によれば、地方間格差が生じる一つの要因は新幹線の有無にあるといいます。「我田引鉄」とは、有力政治家が力づくで、地元へ路線を引かせることですが、もしそれが現在も事実なら四国新幹線実現の道程は益々厳しくなります。理由は一票の格差是正措置により、今度の参院選では、高知と徳島が合区され、議員定数が更に1名減少するため「我田引鉄」の牽引力が一層弱くなるからです。結果、四国は地方の中で更に取り残されることになります。
一票の格差は、是正される必要がありますが、それが地方間格差を助長することになってはいけないと思います。地方創生が掛け声倒れにならぬよう、なんとか起死回生の政策を見出すことを、政治に関わる人々には、お願いするばかりです。さて改めて申すまでもなく香川県にとっての地方活性化の切り札は「さぬきうどん」。香川には、うどん以外にも、瀬戸芸、オリーブ、ハマチ、金毘羅さん、栗林公園など魅力的な名物や観光資源が沢山あります。しかし取り敢えずは「さぬきうどん」をきっかけに来ていただき、その後他の名産品も体験していただくのがベストかと。それが「うどん県・それだけじゃない香川県」のコンセプトです。
さて前置きが長くなりましたが、「うどん県」を標榜するのにもってこいのプログラムが香川大学で始まりました。その名も「うどん学2016@香川大学」。具体的には、香川大農学部地域資源学科が、農学部3・4年生の選択科目として14回の講義を提供します。講師は、農・医学部の教員を始め、県内の製麺・製粉会社の経営者らが教壇に立ち、麺の科学や栄養学から、ゆで汁処理問題に至るまで、うどんにまつわる幅広い話題を提供します。更には製麺工場の見学や手打ちうどん体験の実習など、内容は盛り沢山。そして「うどん学」の締めくくりは、「うどん学検定」となります。
気になる人気の程はといえば、初回の講義では170名近くが殺到するほどの大人気であったため、急遽2回目以降の受講者は、くじ引きで100名に限定されました。希望者全員に受講していただきたいのは山々ですが、工場見学や実習などの関係で、泣く泣く100名に制限されたようです。香川大学農学部では、産学官連携によりこれまで「オリーブ学」「希少糖学」などを開講してきましたが、今回の「うどん学」は地域産品をテーマにした講座の第3弾となります。
「うどん学」全14回の内容は下記の通り。これだけ勉強したら、いつでもうどん店が開業できそうです。ただ開業すると様々な苦労に直面します。開業するまでは一苦労ですが、それを維持するのはもっと大変です。繁盛店にならずともうどん店を生業として生活するだけも様々な苦労が伴います。うどん店開業においては、最初の1年間が第一関門で、丸5年を経過して初めて軌道にのったといえますが、ここまで到達できるのは少数派で、その道程は想像以上に困難です。他の商売も同様ですが、うどん屋さんとしてやっていくのも並大抵ではありません。
【うどん学2016@香川大学のカリキュラム】
1.さぬきうどん学概要(うどんの歴史・文化・うどんの生産量と消費量)
2.小麦の話し
3.さぬきの夢
4.小麦製粉の技術
5.小麦粉の科学
6.うどんの製造技術(手打ちうどん・機械打ちうどん・半生うどん・冷凍うどん)
7.うどんのコシと老化
8.うどんのトッピングや薬味に用いる野菜について
9.うどんとだし
10.うどんのゆで湯の廃液処理
11.うどん製造工場見学
12.グルテンとデンプンの分離と性状
13.手打ちうどん実習・官能評価表及び総括
14.定期試験(うどん学検定)