#637 段階式製粉方法⑤・・・1B粉と1SC粉

ダイヤグラムに示されたロードマップの順番で、小麦は製粉工場の中を行ったり来たりしながら、最終的に50種程度の上り粉に取分けられます。簡単のために上り粉の数を50とします。そして次にこの50種の上り粉をグループ化して、等級の異なる小麦粉を配合します(#165)。このときでたらめに配合しても意味がないので、普通は上り粉をグレードの順番、つまり灰分量の少ない順番に並べます。ここでは、次のようにグレード順に番号をつけます。
F01 < F02 < ・・・ <F49 < F50

つまりF01が一番グレードの良い上り粉で、F50は一番低い、表皮部分となります。稀に灰分量と色調の関係が逆転することがありますが、基本的には、「灰分の少ない順番 = 色調の冴えた順番」と考えて差し支えありません。つまりF01 が一番白く、F02が2番目に白く、F50は一番色調が劣ることになります。小麦の種類にもよりますが、F01の灰分は、0.3程度であるのに対し、F50は表皮部分なので2%程度になります。ちなみに小麦粒全体の灰分は1.2~1.5%であり、中心部分が低く、表皮に近づくほど高くなります(#417)。

さてここで問題です。上り粉F01(一番灰分が少なくて色調が冴えている小麦粉)は、どのパッセージ(工程)でとれるのか、考えてみてください。小麦を最初に大きく割る1Bパッセージでは、5つのストックに篩分けされ、その中で一番目の細かいストックは、上り粉となります。ではこの1Bパッセージの上り粉がF01になるのでしょうか?答はNoです。最初にとれる小麦粉は、一番粉の名前とイメージが重なるせいか、一番良い小麦粉のように考えたくなりますが、そうではありません。理由は次のようになります。

小麦の表面には、塵や埃などの不純物がくっついています。もちろん精選工程で、小麦の表面をきれいに磨き、不純物を極力取り除きますが、それでも全てを取り切ることはできません。また小麦粒特有の特徴として、縦にクリーズ(粒溝)が走っています。ここは、凹んでいるため、どうしても不純物が溜まり易くなります。そして1B パッセージで小麦を割ると、その不純物が上り粉に混ざりやすくなり、結果として1B 粉の品質低下を招きます。1Bパッセージの目的は、上り粉ではなく、良質のセモリナの採取なのです。

では最高品質の上り粉はというと、1SCパッセージでとれる1SF粉になります。1Bパッセージで採れた大きなセモリナを含むストックは、1Pへ送られます。1Pパッセージでは、軽いふすま片は、吸引により取り除かれ、純粋な大きなセモリナだけが選別され、1SCパッセージへと送られます。そして大きくてきれいなセモリナは、1SCロール機で更に小さくなり、篩いにかけられます。そしてそこで篩い分けられた上り粉、つまり1SC粉が最高品質の上り粉となります。

また1Bパッセージでとれた小粒のセモリナを含むストックは、3Pへ送られ、そこで純化された小ぶりのセモリナは、1SFロール機へ送られます。そして1SFロール機で、もう一段小さくなったストックは、篩い分けられ、この上り粉が1SF粉になります。この1SF粉も1SC粉に匹敵する上り粉です。ちなみにSCはセモリナコース(Semolina Coarse)、つまり大きなセモリナ、そしてSFはセモリナ・ファイン(Semolina Fine)、つまり小さなセモリナを処理するので、その頭文字をとっています。

この1SCもしくは1SF粉だけでうどんを打つと、色調の冴えた、色艶の良い、滑らかなのど越しのうどんができます。うどんの風味については、もう少し周辺部の上り粉が入った方が良い、と感じる人もいますが、滑らかさ、つるみ感、のど越しの良さにかけては、このクラスの上り粉が一番です。