#011 その後の「さぬきの夢2000」・・・Part1

【「さぬきの夢2000」を使用してほしい人たち】
現在、さぬきのうどん店の数は800店とも900店ともいわれていますが、ハッキリ言ってS級のうどん店は、興味を示していません、というより無理です。理由は今でさえ大勢のお客に対応しかねているのに、これ以上増えても困るし、またできないのです。というのは、作業工程が面倒なため、従来の製法をレシピAとすれば、「さぬきの夢2000」については別のレシピBが必要となりますが、忙しい現場でこの両方をこなすのは現実的には不可能です。

では、本当に「さぬきの夢2000」を使用してほしいお店というと、比較的作業工程に余裕があり(ということは長い行列はできてないお店?)、おいしいうどんづくりに積極的に取り組む意欲のあるところになります。ただ現時点では、部分的に使用しているところは、そこそこありますが、お店でつくるうどん全てを「さぬきの夢2000」に切り替えるところは数えるほどです。しかし、こういった人たちに使ってもらえないと地産地消は進みません。

【「さぬきの夢2000」の需給バランス】
現在「さぬきの夢2000」は不足気味です。元々生産量が少ないので当然といえば当然ですが、その理由は少し説明が必要です。さぬきのうどん店で使用されている「さぬきの夢2000」の絶対量はそんなに多くはないので、これが不足している理由ではありません。結論から言うと、本当の理由は一部大手製麺会社に製造が集中しているからです。「さぬきの夢2000」の製麺性が良くないのは事実ですが、機械製麺だと比較的安定的に大量生産が可能です(理由は省略しますけど)。そしてこのほとんどは県外に輸出されます。メディアで頻繁に採り上げられた結果、今や「さぬきの夢2000」はナショナル・ブランドになりつつあります。つまりほとんどは県外で消費され、香川県内の専門店のうどんとして食べられているのは僅かです。この状況は現在のところ県の思惑とは少しずれています。

【製麺講習会でのある質問】
「「さぬきの夢2000」はゆで後の伸びが早いがなんとか改善できないか?」という質問が講習会でありました。これは「さぬきの夢2000」のたんぱくが低いためにどうしても避けられない点です。改善策として生地の鍛え工程を多くすることが提案されました。実際、手間隙かけて生地を引き締めれば、ゆで後の伸びもある程度防止できることがデータとしても示されました。が、しかし、個人的にはこの方法は賛成できません。

確かに、生地をより多く鍛えると、稠密になってゆで伸びはある程度は抑えられます。しかし、肝心のうどんの味はどうなるか?鍛えすぎた生地は硬くなりすぎて、うどんの旨みに欠けると思います。よくうどんの生地は鍛えれば鍛えるほど、また踏めば踏むほど、おいしいうどんができると確信している人を見かけます。気持ちはよくわかりますが、実際には逆効果になることもあるのです。よって「さぬきの夢2000」100%使用にこだわるのであれば、無理に量販店向けのゆでうどんとして流通させるよりも、専門店でゆであげ直後のうどんだけを提供することを考えた方がいいと思います。

【今後の「さぬきの夢2000」】
このように、香川県の思惑とは裏腹に「さぬきの夢2000」うどんの多くは乾麺、半生うどんとして県外に輸出されています。今後、県内のうどん店にどれだけ普及するかは、正直うどん屋さんの意欲にかかっているのです。行政、小麦生産者、そして製粉業者も一体となって普及に努めているのでなんとかさぬきのうどん屋さんに根づいてほしいものです。

また、これ以外に「さぬきの夢2000」の普及方法として2つ提案したいと思います。実は県外のうどん屋さんの中にも「さぬきの夢2000」に対して意欲的に取り組んでいる方も多くいます。香川県としては、県主導で開発された「さぬきの夢2000」がこのような形で県外に流出するのは望んでいないかも知れません。しかし、現在「さぬきの夢2000」うどんの多くが県外で消費されている事実からしても、そんなに問題にすることとも思えません。むしろ、「同じ県外で消費されるなら、うどん専門店の方がより実際のさぬきうどんに近いのでいいじゃないか」と個人的には思います。地産地消も大切ですが、本当に良いものを県外に向けて発信することもそれに劣らず重要です。

それともうひとつ。これも香川県としてあんまし乗り気ではないようですが、「さぬきの夢2000」と従来品とのブレンド粉を提案する方法で、こうすればもっと普及するはずです。一部には熱烈な「100%支持者」もいますが、もう少し柔軟に考えてもいいような気がします。いずれにしても、「さぬきの夢2000」はすばらしい小麦です。「さぬきの夢2000」でできた本当のさぬきうどんを、一人でも多くの皆さんにその美味しさを味わっていただきたいと思います。