#012 さぬうどん存亡の機(さぬきうどん不正表示問題について)・・・Part1
さぬきうどんの実態
先日JA香川県による「さぬきうどん不正表示事件」が大きな問題となりました。そこでこの事件を私たちの視線で考え、まとめてみましたので、ここに報告しておきたいと思います。ただ、非常に身近に起きた問題でもあるし、また個人的な感情のいれこみもかなりあるので、必ずしも皆さんの同意が得られないかもしれません。できればあくまでひとつの意見として読み流してください。
これまで、「さぬきうどん」という言葉は数え切れないほどでてきました。では改めて「さぬきうどん」の定義は何だろうと考えても、そんなにキチンとしたものがあるわけでもありません。もちろん、生めん類に限っていえば、「生めん類の表示に関する公正競争規約」があり、そこでは生産地、加水量、食塩、熟成時間等々に関する基準が定められ、これらを満たすものが「さぬきうどん」ということになってはいます。でも、これは全国生めん公正取引協議会の自主規定であり、この会に加入していなければ従う義務はありません。
また乾麺においては、生めん類のような全国的なさぬきうどんの決まりはありません。ただ強制法である「乾めん類品質表示基準」では「長径を1.7mm以上に成形したもの」が一般の干しうどんとして規定されています。そしてローカルですが、香川県では製粉・乾麺製造業者を主体として構成する香川県製粉製麺協同組合が、一応乾燥うどんについての「さぬきうどんの基準」なるものを設けてはいますが、これも別に守らなくても何の罰則規定もない、単なる紳士協定にしか過ぎません。
更にはサービス業として、うどん店をオープンする場合には、はっきりいって何の制約もなく、誰でも好きな場所で店舗を構え、「さぬきうどん」とかいた幟をたてることができます。このように考えると、実に何でもアリですけど、まあ常識的に考えると、「さぬきで作られたうどんがさぬきうどん」というのが、一番わかりやすいというか、納得できる説明かな、とも思います。
ところでここで重要なのは、どの「さぬきうどんの規定」をみても、その原料については、一切何も触れられていない点です。つまり、小麦でありさえすれば、それは香川県の小麦、北海道の小麦、またオーストラリアの小麦であろうと何でもいいのです。というか、もしさぬきうどんの原料を「さぬきの小麦」に限ってしまえば、それはとても需要をまかない切れるものではありません。
繰り返しますが、現在香川県で生産されるさぬきうどんの原料は、ほとんどがASWであることは、前にも触れました。実際この事実は、中学の教科書にも紹介されています。「中学社会・公民的分野(大阪書籍、平成8年2月29日検定済)」の中には次のような記述があります。「・・・ところが、香川県のうどんの原料は、オーストラリア産を中心とする輸入小麦の割合が80%で、セトコムギなど国産小麦の割合は20%程度にすぎません。・・・(中略)・・・だから私たちは、うどんは讃岐にかぎると信じて、オーストラリア産小麦を食べているのです」。
ただこの教科書にでてくるデータは少し古く、現在ではオーストラリア産への依存度は更に高くなっています。「さぬきの夢2000」は良い小麦には違いありませんが、現在のところ絶対量があまりに少な過ぎるのです。2003年に香川県で生産されたうどんは小麦粉に換算すると66,985トンです。これに対し、「さぬきの夢2000」小麦は3,100トンでこれは小麦粉に換算すると僅か1,900トンにしか過ぎません。つまり、「さぬきの夢2000」でつくられたうどんは全体の僅か3%未満にしか過ぎないのです。
皆さんの期待には沿えないかも知れませんが、このように「さぬきうどん」の原料は今ではほとんどがASW(オーストラリア産)に依存しているのです。では、「なぜさぬきうどんは他の地域のうどんと違うのか?」と聞かれると、それはさぬきうどん独自の製法に依存するとしか答えようがありません。更には同じ原料(ASW)を使用しても、需要が多い分、うどん用に適した、また鮮度の高い小麦粉が効率よく生産されるからかも知れません(自意識過剰か?)。いずれにしても原料のほとんどはオーストラリア産であることを覚えておいてください。