#029 ポジティブリスト制の小麦への適用

現在、小麦は国家貿易品目といって、国がすべて一元管理しています。輸入先は、アメリカ、カナダ、そしてオーストラリアです。現行では、小麦の場合、102農薬についての基準値が定められていますが(ネガティブリスト制なので、これ以外は検査してないことになります)、平成18年5月29日より次のようなポジティブリスト制に移行します。

現在考えられているポジティブリスト全体、つまり使用することができる農薬の数は790品目(すごいですね)あり、これを次のような手順で検査します(添付の図を参照してください)。

農林水産省HPより

農林水産省HPより

①サーベイランス(Surveillance)検査
サーベイランスとは監視する、つまり傾向を監視するためのサンプル検査といった意味合いでしようか(的を射ない説明ですいません)。現地の輸出港エレベータにある小麦を抜き取り、日本に空輸し、305品目について検査します。この内訳は、一律基準(0.01ppm)が適用される農薬248品目と、検査技術の問題から、個別に基準値が設定される農薬等57品目になります。簡単にいうと、可能性は限りなくゼロに近い(?)けれど、ドリフトなどの不可抗力により、検出される恐れがあるので、念のために検査する項目です。

②着地検査
これは実際に、現地の港で日本向けに積み込みをおこなっている小麦を抜き取り、日本に空輸し、①で検査されなかった残りの内、273品目に対して検査します。内訳は農薬使用の観点から、個別に基準値が設定されている267品目と不検出として設定される農薬6品目です。簡単にいうと、本来農薬として使用される可能性のある農薬の残留農薬を検査します。

①と②をあわせると578品目となり、全体の790品目には、212品目足りません。でもこれらは、動物用医薬品、飼料用添加物など、「さすがにいくらなんでも小麦には使用されないだろう」と思われるもので、検査対象外品目として扱われ、検査はされません。つまり、①サーベイランス検査と②着地検査を併せて、全農薬を網羅することになります。また、ここでは農以外にもDON(DeOxyNivalenal、デオキシニバレノール)といって小麦の病気の一種である赤かび病菌の検査もします。

③行政検査
船が日本の港に入ったときに行われる検査です。ここでは、小麦に害虫が発生していないかなど、一般的な検査がおこなわれ、DONの検査も再度おこなわれます。また、輸送途中の船内での燻蒸(くんじょう)などは原則として行いませんが、もしされた場合は、当然ここで検査されます。

尚、農林水産省のHPには昨年度まで、日本に輸入された小麦の残留農薬の分析結果がアップされています。興味ある方はこちらをどうぞ↓。
農水省HP(https://www.maff.go.jp/syoku_anzen/beibaku.htm

また国産小麦については、基本的には全農が責任をもって管理します(ということらしいです)。「登録農薬を適性に使用していれば、食品衛生法に定める残留農薬基準を超えることはない」との考えを基本に、生産現場における生産・出荷の工程管理を徹底し、その内容を確実にチェックする、とのことです。ということで、小麦粉については、十分に政府を信頼して、今後ともよろしくお願いします。