#031 味の3点セット・・・その2

そこで最初の本の内容に戻りますが、著者の安部氏曰く、これら「おいしい食品」すべてに共通しているのは、それらの原材料に「塩、調味料(アミノ酸等)、たんぱく加水分解物」の3つが含まれていると。確かに、どの袋の裏面の原材料表示をみても、判で押したように、この3点セットは印刷されています(みなさんもお手元の袋を見てください)。「だからみんな同じような味がするのかなあ?」、「『ねばねば』が残るのは、調味料が効き過ぎているのかなあ?」などなど、勝手に想像しました。

では、なんで必要なのか?それは、美味しい味をだすには、これらを利用するのがもっとも安価で簡単だからです。いまどき、うどんのつゆをつくるのに、いちいち昆布、シイタケ、鰹節からだしをとっていたのでは、時間がかかるし、何より原材料費が高くなりすぎて、できないのです。その代わりにグルタミン酸ナトリウムをたっぷりと入れて、調味料(アミノ酸等)として表示、またおいしさの素であるアミノ酸を、たんぱく加水分解物として表示している、ということです。

「たんぱく加水分解物」は聞き慣れない言葉だったので、少し補足しておきます。これは、たんぱく質を力ずくで加水分解して、アミノ酸にしたものです。たんぱく質は約20種類のアミノ酸がくっついてできていますが、これを「ぶちぶち」と切って、アミノ酸に分解すれば、おいしさがでてくるという仕組みです。肉も魚もさばいた時点よりも、少し時間が経過した方がおいしくなるのは、熟成する、つまりたんぱく質が分解してアミノ酸に変わり、これを「うま味」と感じるからです。

醤油は麹菌の力によって、つまり酵素が大豆のたんぱく質を分解して、複雑なうま味をもつ様々なアミノ酸をつくるからおいしくなります。ただ、麹菌の力に頼っていたので、一年に一回しかできないので、一般にはここで説明した手っ取り早い方法をとるようです。普通(?)の醤油が1㍑198円で買えるのに、原材料に「塩、小麦、大豆」としか書かれていない、昔は普通だった醤油が1,000円もする理由はそこにあります。もっとも、有機野菜(良いかどうかは別にして)など、昔の製法で製造しているものは、手間暇かかるので、高くなるのは仕方ありません。

「安くておいしいものができれば、それでいいじゃん」というのはご尤もですが、そこに食品の安全性が保証されているかどうかの点で、引っかかる人もいます。安部氏曰く「たんぱく加水分解物には(1)酵素の力を利用する方法と(2)塩酸処理法といって、塩素の力でもって力ずくでたんぱく質を『ぶちぶち』切ってアミノ酸をつくる方法がある。そして、後者の方法が安価であるので、圧倒的に使用されているが、問題はその製造段階で私達にとって有害である塩素化合物ができるので、そのあたりがちょっと引っかかる」と。

なるほど、そんな風に言われてみると、「ヤバイかな」って気がしないでもありません。でも、いみじくも食品添加物というのは国が安全であると認めたものしか、認可されていないので、問題ないとも思います。でも、このあたりは判断できる立場にないし、結構グレーゾーンのような気もします。ただ、個人的には安部氏が指摘した点で、ふたつ気になることがありました。

(1)摂取量の問題
原材料表示では、入っているかどうかがわかるだけで、どれだけ摂取したのかわからない。ので、その点がちょっと心配といえば心配。
(2)複合摂取の影響
個々の食品添加物は、たとえ安全であっても、複数同時に摂取したときの、影響はわからない。なるほど、もっともだと思います。しかし、何百種類あるものの全ての組み合わせを、それも長期間に亘って、その影響をしらべるのは不可能なので、これは誰にもわかりません。

結論:できることなら食品添加物は摂らない方がいい。しかし、現実には無しで済ますわけにもいかない。ただ袋の裏をみて、あれこれ悩む時間があれば、その分散歩する、自転車にのる、テニスをする、またゴルフをするなど身体を動かす方が、いいことには間違いないと思います。