#039 焼きうどん

まだ2、3度しか会ったことのない NHK の C ちゃんと、「外国人に受けるうどんメニューは何だろう?」という話になりました。

私: 「標準的なメニューは、ほとんどアウトじゃありませんか?だって、あの『ずるずる』とすする音はどう考えても拒絶反応がありそうだし、かといって熱いつゆに入っているうどんを『ずるずる』しないで食べようとするとやけどするもんね」

Cちゃん:「でも、この前ニューヨークで釜玉うどんをだしたら、結構ウケ、よかったようですよ」

私: 「釜玉って、さぬきでも観光客の間では人気あるみたいだけど、さぬきの人で食べてるの、ほとんど見たことないけどなあ」

Cちゃん:「そうかなあ」

私: 「じゃあ、うどん焼きはどう?あれって、パスタと同じような感じで調理できるし、熱いつゆもないので、『ずるずる』もしないし、フォークでくるくる巻けば火傷もしないので、いいかも」

Cちゃん:「何ですかそれ?焼きうどんのこと?」

私: 「どっちでも、いいと思いますけど、こちらでは『うどん焼き』」

Cちゃん:「えぇ~。普通、『うどん焼き』って言いませんよ」

私: 「○×△◎●○×△◎●」

で、 Google ってみたら、圧倒的に「焼きうどん」の方が多く、多数決の原理でこちらが正解となりました。「ガァ~~ン!」。ちなみに、「うどん焼き」でひっかかったのは、さぬきのうどん屋さんの HP 、もしくは、前後の並びで、「○○うどん、焼き△△」という表現のあるページだけでした。もちろん、後で広辞苑も引いたけど、当然ながら「焼きうどん」しかありませんでした。

永年生きてきたけど、この単語は全くのノーケアーで、大変勉強になりました。今後東京に行ったら、「焼きうどん」ということにします。「でも、なんでこれまで気づかなかったんだろう?」と考えるに、東京でなんて、これまで「焼きうどん」を食べる機会がなかったから、そもそもそういう単語を口にすることがなかったんですね。

さて、ここで「焼きうどん」から外れて、方言の話に移ります。香川から上京し、東京での生活にも馴れてきて、ある程度すらすらと東京弁が操れるようになった頃です。話のつじつまが、どうも合わない。自分は「アパートを借りて、生活している」と言ったつもりなのに、先方は「私はリッチなのでアパートを購入して、そこに住んでいる」と解釈しているような節がある。そしてその原因は、動詞の使い方に問題がありました。香川では「借りる」ことを「かる」といい、過去形では「かった」となります。だから、「アパートをかった」と言うと、「購入した」ととられたんです。

ついでに言うと、香川では「購入する」の現在形は「買う」ですけど、それが過去形になると、「買った」にはならず、「こうた」になり、「買った」とは区別されます。全然、発音の違う単語なら覚えてしまえば問題ありませんが、このように場所によって、意味が異なるのはやっかいです。

あと、アクセントも違います。さぬきでは3音節の単語は、なぜか第一音節にアクセントがくることが多く、リンゴ、電話などがその例です。こちらの人はリンゴといわず、 リ ンゴといい、電話も デ ンワになります(少なくとも以前は)。

ずっと昔のこと、日本語を習っているアメリカ人が apples のことを リ ンゴと発音しているで、「けったいなアメリカ人やなあ」と思っていると、その先生がさぬき人だと判り、思わず吹き出しそうになりました。高校生の頃は、上京していた先輩方が帰省する度に、語尾が「○○ね」とか「××さ」になっていて、「こいつ気持ちわるいな~」なんて思っていたのに、そうなっている自分に気づいて、自己嫌悪になったこともあります。