#067 さぬきの人が一年に食べるうどん玉の数

「さぬきの人は、うどんをたくさん食べている」というのは間違いない事実です。でも「年間どれだけのうどんを食べているのか?」となるとはっきりした数字はわかりません。この問題は、結構関心が高く、150玉とか300玉など色々な数字が挙がっていますが、正確な数字を出すのはなかなか困難です。で、いくつか当たってみると、目安になりそうなものが一つ見つかりました。大阪書籍の中学社会の教科書( 2001年発行)には次のような記述があります。

【香川県の讃岐うどんといえば、麺類の好きな人ならだれでも知っているように、日本のうどんの代名詞といってよいほど有名です。実際、香川県は、うどんの生産量では日本で一、ニを争っており、また消費量においても、県民1人あたり年間 188 玉といいますから、全国平均の 26 玉を大きく引き離しています (1993 年 ) 。】

 

この数字をいったいどのように計算したのか、興味があったので直接問い合わせてみたら、次のような丁重なお答えをいただきました。さぬきで 1993 年に製造された生うどんが、 8,717 t(小麦粉換算、以下同じ)、ゆでうどんが 24,465 t、両方あわせて 33,182 tとなり、県内消費分は 46.4% なので約 15,400 tとなります。一人前は約 80g なので、これから、消費されたうどん玉は 1 億 9,250 万食となります。一方、香川県の人口が 102.5 万人ですから、これで割ると、 1 人あたり 188 玉になります。同様の計算を、日本全体でしてみると、 26 玉となり、香川県民は全国平均の 7 倍以上のうどんを食べていることになります。

確かに 1993 年のうどんの生産量は、新着情報 #65 【うどん生産量の推移】の数字とピタリと符合し、信憑性が高くなかなかいい線いってる気がしますけど、ただ、二つ気になる点があります。ひとつは、県内消費分の 46.4% はどうやって算出したのか?二つ目は、この生産量の中には乾燥うどんの 7,694 tの内、県内消費分が含まれていないこと。だからこの数字はもう少し動きそうな気がします。そこで別の見方をしてみます。

「ゆでうどん」や「生うどん」は、冷凍技術、保存技術、更には包装技術の技術革新によって、長期保存が可能になり、ここ20年の間に、数多く県外に出荷されるようになりました。逆に言えば、これらの技術革新が起こる前は、これらのうどんはほとんど県内で消費されていたはずです。つまり、表中の 1980 年あたりの数字( 16,875 t)のほとんどが、県内消費であったであろうと推定できます。いくら香川県民がうどん好きといっても、僅か 10 年や 20 年で、以前にも増して、ずっとずっと多くのうどんを食べているとは考えられません。またこの当時生産されていた乾麺は、既に相当量、県外に出荷されていたことを考慮すると、香川県での消費は16,000 tを超えることはないはずです。だから、どんなに多く見積もってもこれ以上食べているということは考えにくく、この数字が上限になります。

この 16,000 tを 80g (一人前)で割り、更に人口 100 万で割ると、 200 玉となります。こう考えると上記の 188 玉というのは、結構いい線いっているのかも知れません。もちろん、この数字は 0 歳児から年配の方すべての平均なので、元気な大人たちはもっと食べています。「平成 10 年度地域外食産業振興育成事業実態調査」というとっても長い名前の資料によると香川県民一人当たりの年間消費量は、男性310玉、女性149玉。また年齢別では165玉( 10 ~ 29 歳)、216玉( 30 ~ 49 歳)、そして236玉( 50 歳以上)となっています。男性は女性よりたくさん食べるし、また年配の方が多いのは、加齢とともに嗜好があっさり系に移るからだろうと考えます。

直近の資料では、日本全体で年間 285,000 tのうどんが生産されているので、人口 1 億 2,500 万人とすると同様の計算で、一人当たり年間 28 玉となり、やっぱり香川では全国平均の7倍のうどんを食べていることになります。ちなみに、私はよほどのことがない限りお昼はうどんです。また夕食に食べることもあるので、少なくとも年間 400 玉は食べていることになり、香川県民としての義務は果たしています。