#077 うどん屋さんを開業したいが・・・

新潟県・M.I.さんからのメール

今まで、うどん作りの専門誌、書籍を参考にし、自分なりに考えながら作り、身近な人達からは高評価を得られるようになりました。そこで近隣の農家の農作物や手作り品を売る店に、自分の作ったうどんを出品することが決定しました。将来、うどん専門店を開業しようと考えていますが、その一つの段階として挑戦しようと思っております。いろいろと不安なところがあり、貴社での前例やノウハウなどありましたら教えてください。

 

ざっと考えると、うどん屋さんになるには次のような方法があります。

1. 短期のうどん講習会を受ける。

2.さぬきうどん科に入学する。

3.うどん専門店に丁稚奉公に入る。


1.は製麺機メーカーが開講していることが多く、日程も内容に応じて1~5日間など色々あります。といっても、1日コースでは「うどんづくり」を体験するくらいで、大したことはできません。あと期間が長くなるに連れて、天ぷらの揚げ方とか、だしのとり方まで一通り勉強します。でもこれらはあくまで「ざっ」とやる程度で、これで直ちに開店できるわけでは、全くありません。自動車の運転でいうと、「発進、停止」ができるようになったくらいで、これから更に反復練習を繰り返して、無意識にできるように、身体で覚える必要があります。

またこの種の講習会の特徴として、それぞれの会社の製麺機を使用していることが挙げられます。というか、製麺機メーカーは自社の製麺機を使っていただくのが、目的なのでそれぞれの製麺機に合わせた指導内容になります。よって、純手打ちうどんにこだわる方には向かないかもしれません。ただ、現在では、機械を使わずに全て手作業でこなしているうどん屋さんは、数えるほどです。純手打ちが理想かも知れないけれど、人手、作業性などを考えると、うまく機械を組み合わせるのも現実的な選択肢です

2.についての詳細はこちらをどうぞ。こちらは丸亀高等技術学校が開設していて、三ヵ月という長丁場ですが、時間的に余裕のある方にはオススメです。うどんづくりだけでなく、小麦粉の基礎知識、食品衛生など、ここでなければ学習できない事柄が多く含まれているところに、「さぬきうどん科」の存在価値があります

そして3.はもっとも現実的な方法かもしれません。まあ事情が許せば、ベストな方法として講習会を受けて、さぬきうどん科も卒業して、仕上げとしてどこかのうどん専門店で、しばらく丁稚奉公することかもね(簡単にいうと全部やってみればいいということですけど・・・)。

ただ、いくら用意万端ととのっても、実際に開店にこぎ着けるのは大変で、まして繁盛店にするのは至難の業です。コシのあるおいしいうどんさえできれば、流行りそうですが、実際はそんなに単純ではありません。

昔、自転車マニアの知り合いがいて、彼はパンクどころか分解、組み立て、メンテまで全て自分でこなすんです。その自転車屋顔負けの技術に見とれて、つい「自転車屋でもやったらどうですか?」と聞いたら、「いいや、つい凝りすぎるんで商売にはならんわ」、と。つまり、ついつい完璧を期して、手間隙かけるのでなかなか儲けにはならんというのです。

うどん店経営というのは、あくまでも飲食業のひとつであり、接客業です。うどんづくりも大切ですが、それ以外にも重要な要素がたくさんあります。営業収支だけを考えるなら、完璧なうどんを追求するよりも、うどんはそこそこの及第点で十分と割り切って、それ以外の接客態度などの商売センスに磨きをかけるのが成功への近道かも知れません。なんか、色々なうどん店を見るにつけ、そんな気がしてなりません。