#083 小麦粉に含まれる水分
製粉したて、つまり挽きたての小麦粉には、14.0~14.5%の水分が含まれています。なんで水分に幅があるかと言えば、アバウトに製粉しているからではなく、小麦の銘柄、また季節によって多少異なるからです(後述)。では、時間が経つとこの水分はどう変化するか想像してみてください。可能性としては、次の3通りあります。
①小麦粉の中の水分が蒸発して減る。
②空気中の水分を吸収して増える。
③変わらない。
例えば、洗濯物は湿度100%の雨降りの日でも、干しておくと少しずつ乾きます。逆に海苔は容器から出して放置しておくと、たとえ「からっ」と晴れた日でも、水分を吸収して「ぐにゃ」となります。だから小麦粉の場合はどうなるか、頭で考えてもなかなかわかりませんね。
一般にある食品を放置しておくと、それは乾燥もしくは吸湿して、ある一定の水分に近づきます。そしてこのときの水分量をその食品の平衡水分量(へいこうすいぶんりょう)といいます。つまり水分が出てもいかず、また入ってもこないで丁度つりあっている状態です。小麦粉の場合、20℃、湿度40%のときの平衡水分は、12%程度といわれています。平衡水分はもちろん、気温と湿度に密接な関係があります。20℃、湿度60%では約14%、湿度80%では約17%と、湿度が高くなるにつれて平衡水分も当然高くなります。
だから通常の状態で保存すると、挽きたて直後の小麦粉の水分は14%程度なので、それは時間とともに乾燥して12%程度にまで下がることになります。これは紙袋に入っていても同じで、小麦粉は時間とともに、少しずつ乾燥します。つまり、挽きたての小麦粉は水分が多く、時間が経過したものは少ないことになります。もっとわかりやすく言うと、新鮮な小麦粉は水分が高く、古い小麦粉は乾燥して水分が低いということです。但し、ポリ袋とか密閉性が高い容器に保存している場合は、水分が逃げていくところがないので、この限りではありません。
で、これを検証するために、例によって簡単な実験をしてみました。まず2006年11月28日、製粉直後の小麦粉の水分を測ったところ14.3%。次にこの小麦粉を封筒、少し大きめの紙袋、そして密閉性の高いアクリル容器に入れ、2ヵ月後の水分を再び測ったところ、それぞれ12.25%、12.60%、13.85%となりました。よって紙袋に入れて2ヶ月程経過すれば、平衡水分にかなり近づくことがわかります。またアクリル容器に保存しても、少しは蒸発しています。
この2%の水分ロスは、大したことないと思うかもしれません。でもこれは、いつも加水率50%でうどんを打っているとすると、2ヶ月経過した小麦粉については48%の加水率で打っているのと同じ位の感じになるので、ちょっと硬めになるはずです。特に、グルテンの少ない国産小麦粉は、2%の加減で生地がまとまらなかったり、柔らかくなったりするので、注意が必要です。つまり加水率は、気温、湿度だけでなく、小麦粉の鮮度によっても調整する必要があるということを覚えておいてください。
季節の変わり目に、「同じようにやっているのに生地が軟らかくなりすぎる」とか「なかなか延びない」というお電話をいただくことがあります。そしてこれらの原因の多くは、加水率にあります。同じ銘柄の小麦粉だからといって、判で押したように、同じ加水率ではなくて、気温、湿度、小麦粉の鮮度などに応じて、臨機応変に対応してくださいね。そうしていただくと製粉会社もとっても助かります。