#085 ダマはどういうときにできるのですか?
「ダマ」とは普通、小麦粉を水などで溶いた時に、よく溶けずにできる粒状のかたまりのことを言います。またこれから派生して、小麦粉の袋を開けたとき、小麦粉が小さな固まりを形成しているとき、これもダマといいます。ここでとりあげるのは、後者のダマです。通常であれば、見かけることはありませんが、「あるところでダマを見たことがある。なぜできるんだ?」とのご質問をいただいたので少し説明します。できる原因をざっと考えると:
1)重いものの下敷になったとき
小麦粉の入った紙袋は、工場または問屋さんの倉庫では、パレットに重ねて保管されています。このとき多く重ねすぎると、下の方の袋には、大きな圧力がかかり、小麦粉が固まりやすくなります。小麦粉を掌にとって、「ぎゅっ」と握り締めると固まりますが、それと同じ理屈です。ただ短時間でできることはなく、1ヶ月以上下敷になっていると、ダマができることがあります。
2)湿度の高いところ
湿った空気は地面に下りてくるので、同じ倉庫の中でも、下の方が湿度が高くなります。よって、下になってる小麦粉が吸湿しやすく、ダマができやすくなります。うどん専門店で、小麦粉を保管するときは、地べたに直接置かず、必ずスノコの上に置くのは、風通しを良くして湿度を避けるためです。
3)冬より夏、特に梅雨時はできやすい
日本の冬は乾燥し、梅雨時は湿度がもっとも高くなります。よって季節でいうと、梅雨時分にダマができやすくなります。
4)粒度が小さい方ができやすい
小麦粉といっても粒の大きいのもあれば小さいのもあります。見た目は同じでも、小麦粉に慣れ親しんでくると、感触でだんだんと違いがわかるようになります。小麦粉の粒の大きさ、つまり粒度は、製粉するときの、ロール機の締めて具合で調整することもできますが、一番影響されるのは、小麦の種類です。硬質小麦は、硬いので粗くなりやすく、よって強力粉は粒度が大きく、逆に軟質小麦は柔らかいので、細かくなりやすく、よって薄力粉は小さくなります。つまり同じ保存条件であればケーキ用やてんぷら用の薄力粉は、パン用強力粉に比べて、ダマができやすくなります。
うどんを作る最初のステップは、「水回し」です。何事も最初が肝心ですが、うどんづくりにおいてはとくに重要です。これは、小麦粉と塩水をできるだけ均一に混合することを指します。うまく混ざれば、生地は細かいそぼろ状になります。水回しの前に、丁寧に篩にかける方がいますが、これは確かに理にかなっています。篩にかけると、小麦粉の間に空気が入り、水回しが一層容易になります。ダマのないふんわりとした小麦粉なら、塩水と馴染みやすくなるからです。
新しい粉だと、いちいち篩にかける必要はありませんが、「ちょっと、ダマがありそうだなあ」とか、「粉がふんわりしてないなあ」と感じたら、篩にかけるのは良い方法です。そして水回しが終了したら、その状態で乾燥しないよう10分でも15分でも放置してやると(これをそぼろ熟成といいます)、塩水がいっそう小麦粉の隅々まで行きわたり、その後のグルテン形成が容易になり、しっかりとしたうどんができます。
結論:ダマは、湿度が高かったり、重いものの下敷になったり、また古くなったりするとできやすい。そうなると水回しもうまくできず、おいしいうどんができない。いつも同じ結論ですが、「小麦粉は、新しいうちに使いましょう」。