#094 レジ横うどん・・・店で食べるうどんとお土産うどんの違い
大分県のKさんからのご質問:
(Q)昨秋とこの4月に、讃岐うどんツアーにいきました。どこのうどんもおいしく、それぞれのお店のよさがありました。しかし、持帰り用のうどんを各店で買い求めて帰り、7日~10日後にゆでたところ、お店で食べたのとはかなり違った食感でした。なぜでしょう? |
(A)持帰り用のお土産うどんのことを、社内では「レジ横うどん」とよんでいます。うどんを食べ終わって、支払いをしているときに、ふっと横をみるとうどんが並んでいるからです。で、お店で食べたうどんがおいしかったので、ついでにレジ横うどんを買って帰る方は結構います。そして帰ってゆでて、Kさんのように感じる方も結構います。では、なんでお店のうどんとレジ横うどんが違うのかその理由を考えてみると、ざっと次のよ
うなところでしょうか:
(1)レジ横うどんは仕入商品である
レジ横うどんが、そのお店の製品であることは稀で、ほとんどは仕入れたうどんを販売しています。 そのお店で作ったうどんではなくて、仕入商品ならば、味が違うのは当然ですね。「じゃあ、なんでお店でつくらないのか?」というと、作る暇がないのです。うどん屋さんは、朝早くから起きて、生地を捏ねたり、だしをとったり、することは山ほどあるので、わざわざ別に土産用のうどんは作れないのです。
また、自分でつくるとなると、袋、箱、包装紙などなど、すべて自前で調達する必要がありますが、そうなるとかなり割高になります。つまり、袋ひとつをとっても、一度に何万枚も作らないといけないし、かといって、お店では一日に数個しか売れないのでは、とうてい商売にはなりません。だからそんなこんなで、仕入商品を販売した方がずっと便利なんです。
(2)仕入れ商品は大量生産されている
そして、仕入れたうどんの多くは、工場で大量生産されているので、どうしても「そういうカンジの味」になってしまいます。おいしいうどんではありますが、残念ながらお店のご主人が自分の手でつくったうどんとは、同じ味にはなりません。さぬきではメジャーな製麺会社、数社がこういった「レジ横うどん」を生産しているので、全店を調査したわけではありませんが、方々で同じうどんを見つけた方もかなりいるはずです。
(3)「レジ横うどん」はほとんどが半生うどんである
前回、一口にうどんといっても様々なうどんがあることを説明しました。で、レジ横うどんのほとんどは、中期間(2ヶ月程度?)保存可能な半生うどんとなっています。ということは、帰って速攻でゆでても、食感はどうしても「コツコツ」としたものとなり、お店で食べた「もっちり」としたうどんとは異なります。ただ、繰り返しますが、生うどんの方が半生うどんよりもおいしいということではなくて、あくまでも食感の違いの話です。おいしいかそうでないかは、やはり個々の作り方によります。お店のうどんよりずっとおいしい半生うどんも、もちろんあります。
ただ中には、例外的にそのお店でつくった「生うどん」を販売しているところもあります。これなんかはかなり好い線を行ってると思いますが、それでもやっぱりお店で食べるうどんとは違います。理由は、水分活性の高い生うどんは、どうしても時間による品質劣化が大きく、賞味期間を延ばすためにPH調整剤とか酒精といった食品添加物が不可欠で、それが味に影響を与えるからです。かくしてレジ横うどんは、どんなにがんばっても、お店のうどんとは同じにはなりません。買って帰った後、ゆでてその違いに気づき、Kさんのようになにか釈然としない気持ちになる人もいるのです。
では、一番お店の味に近いうどんとなると、お店の打ち立てのうどんをそのままクール便で直送することです。でも、これだってちゃんと完全密閉した袋にいれないと、時間とともにくすんでくるし、何より生ものなので、食味、食感ともに時間とともに劣化します。早い話、うどんは生鮮食料品ということです。だから究極の旨いうどんとなると、やっぱり自分で打った手打ちうどんになります。ということで、よかったらみなさんも「いっぺん、打ってみまい!」。