#109 「さぬきの夢2000」推進プロジェクトチーム(PT)検討会
「さぬきの夢2000」のPT検討会が10月24に香川県庁でありました。いくつかあった議題の中で、今回のメインテーマは、『「さぬきの夢2000」に続く新品種の開発状況について』。ご承知のように「さぬきの夢2000」は優秀な小麦品種ですが、タンパク質が少ない故に、作業性の点で劣ることが唯一の問題点とされています。そこで現在、香川県農業試験場では、問題点を克服しつつ、更に品質の優れた品種開発に取り組んでいます。
でも皆さんの中には「そんな面倒くさいことをしなくても、他の地域で栽培している優秀な品種をそのままもってきて育てればいいじゃないか?」と素朴な疑問を抱く方がいるかもしれません。ごもっともです。でもね、小麦というのは、一般にある地方で栽培されている品種をそのままもってきても成功しません。例えばオーストラリアで栽培されている、うどん用に最適といわれているASWの小麦を、讃岐で栽培しても同じような小麦はとれないのです。理由は、例えば気候風土が違うので、同じように大きくならなかったり、またその地方特有の病害虫にやられたりするからです。
国産小麦のひとつの銘柄「農林61号」は各地で作られていますが、南の方と北とではかなり性質が異なります。タンパク質ひとつをとっても、一般に寒い地方の方が多くなる傾向にあります。ASWは西オーストラリア地域で栽培されていますが、ここでパン用小麦を栽培しても、タンパク質が多くならないので、不適と言われています。このように全ての種類の小麦が、どこでも栽培できるわけではなく、それぞれの地域、土壌に適した小麦品種があるのです。だから、このような背景もあって、農業試験場では「讃岐の讃岐による讃岐のためのポスト夢2000」を開発しているのです。
さて前置きが長くなりましたが、現時点での有力銘柄は、「香育20号」と「香育21号」の二つがあります。前者は、ASWをおばあさん(おじいさん?)に持つクオーターで、後者は純国産です。「さぬきの夢2000」と一緒に両方試食しましたが、どちらもなかなか好評でした。、「香育20号」は、麺がしっかりとしていて、色合いも淡黄色で、いかにもASWを連想させる麺でした。麺線がきちんと同じ幅で揃っているということは、それだけグルテンが強固に形成されていて、それが鉄筋のようにうどん生地の中に張り巡らされているということの証でもあります。
一方、「香育21号」の方は、ちょっと短麺(途中で切れている麺)が目立ったので、グルテンが少し弱いのかもしれません。ただ、隣のテーブルの「香育21号」は、ちゃんとしていたので、私にあたったうどんは、端っこの方だったのかもしれません。いずれにしても、鮮やかさでは若干劣るものの、内麦特有の味わいがあるというのが総評でした。私は、「香育20号」の方に高得点を入れましたが、全体では「香育21号」が若干高く評価されました。
で、ここではたと考え込みます。つまり新品種を開発するときには、そのコンセプトをどう設定するかがポイントになります。ASWがいいからといってASWに近づけるのか、それともまったく独自路線を貫くのか。今回、両者を純粋に品質だけで比較したら、「香育20号」の方に軍配があがりそうですけど、特徴を全面に打ち出すなら、「香育21号」の方じゃないかと。今後、更に検討を重ね、意見を集約しながら、方向性を決めることになります。
そして最終的に決まっても、まだ問題はあります。試験場でうまくいっても、それが実際の畑で大量栽培可能であるかどうかは、また別の話になります。つまり、新薬の開発でいえば、最終的に臨床試験をいろいろやってみて、それでOKになればそこで初めて新品種に切り替わることになります。あと数年もすれば「さぬきの夢20XX」が登場するかもしれません。乞うご期待♪