#124 製粉後の小麦粉の変化③・・・保存方法による違い
新着情報#120、#121、#123などにより、製粉後の小麦粉の変化についてはなんとなくイメージがつかめてきたと思います。簡単に言うと、どんなに良い小麦粉であっても、長い間放置しておくと、グルテンが劣化し、使い物にならなくなるということです。ただ、その劣化のスピードは、最初の小麦粉の状態、気温、湿度、また保存の方法などによりかなり影響されます。そのあたりについて説明しているのが以下の部分で、引用は同じく前回の続きです。
製粉後の小麦粉の変化について③ グリアー(Greer,1954) は小麦粉を密閉したカンに入れ、イギリスのある灯台で27年間10-20℃の状態で保存したが、製パン性および食味官能試験による劣化は認められなかったと報告した。 ラーマー(Larmour,1961) は、小麦粉とセモリナ(小麦粉より少し大きめの粒)を異なる包装形態にて屋外で5年間保存し、その影響を調査した。その概略、および結果は次の通り: サンプルの容器:量目や材質の異なる袋をいくつか用意。 結果: ●標準水分(小麦粉とセモリナ)のものは充分にはパンが膨らまなかったし、不快な臭いも感じられた。 ●小麦粉とセモリナを比較した場合、セモリナの劣化が明らかに遅い。 ●気密性の高い袋に入れた標準水分のサンプルは、室内に保存した場合、製パン性を保持した。 ●低水分の小麦粉は、僅かな臭い、味の変化は感じられるものの官能食味検査はパスした。 ミュールハウザー(Muhlhauser,1974) は、生地の性質や、製パン性をテストし次のように報告した。 ●製粉直後、および3ヶ月経過したどちらの小麦粉も、最適な熟成期間保存された小麦粉に比べて、製パン適性に劣る。 ●高温よりも低温での保存が好ましい。 ●長期間の保存は、特に多湿の場合は尚更、グルテンや酵素活性に影響を及ぼすのでよくない。 これ以外にも次のような報告がある: ●8-10日経過すると熟成は完了する(Tvrznik & Prochazka, 1977)。 ●熟成は7日間は必要である(Lasztity, 1979)。 ●カナダ、アメリカでは1-2日で充分だが、一方60日程度必要という報告もあり、結局各国のデータを総合すると熟成時間についての明確なルールはない(Lasztity,1979)。 シュカノフ(Shukhnov, 1983) は、2種類の小麦粉(A:灰分0.75%、B:灰分1.25%)の最適な熟成期間を調べたところ、Aは5-7日間必要であったのに対し、Bは2-3日間で充分であった。また、賞味期限はAが3ヶ月で、Bは1ヶ月半であった。これは灰分の多い小麦粉ほど、脂質を多く含み、酵素活性が活発であるためである。 ペリカン(Pelikan, 1982) は市販の小麦粉5種(灰分0.525-1.625%)を22-24℃で9ヶ月間保存した。最初の1ヶ月においてはほとんど変化は見られなかった。3ヶ月後、グルテンは2.8%減少し、グルテンの弾性も低下し、そして脂肪酸が急激に増加した。9ヶ月後にはグルテンは50%減少し、脂肪酸は最初の5-7倍に増加し、製パン適性は大幅に低下、そして吸水力は10%減少した。 「穀物とその製品の保存について(D.B.ザウアー編)」より |
上記のまとめは、申し訳ありませんが、時間の都合で次回にご報告いたします。