#126 うどんテイスティング・・・過熟成 vs. 標準熟成
味に定評のある東京のE店と徳島のM店のうどん屋さんが、過熟成のうどん生地を使用しているという事実に着目して、うどんテイスティングしてみました。
うどんは普通、練った生地を数時間熟成させた後、延ばして切りますが、この熟成時間を長くとることを過熟成(と勝手に命名)といいます。うどん屋さんには、大別して「宵練り(よいねり)」と「朝練り」の2方式があります。前者は前の晩に仕込んでおき、翌朝延ばして切るので熟成時間がかなり長いのに対し、後者は早朝に練り、数時間後にはうどんにしてしまいます。
どちらがいいのかは、お店の規模、運営方法などそれぞれのお店の事情によります。不思議というか、当然というか、興味深いのは「宵練り」のお店には、おいしいところとそうでないところがあり、更に不可解なのは「朝練り」のお店にも両方あるという事実です。早い話、過熟成でも通常熟成でも、おいしいところ、そうでないところがあるみたいです。
ただE店とかM店などのように2日も熟成させる店は少数です。手間もかかるし、何より想定以上のお客さんが来たら、生地が間に合わないので当然売り切れごめんになります。でもそれだけ2日熟成にこだわるのは、「うどんが旨くなるから」だと主張します。Eさんは、「うどん生地が『ぷ~ん』と少し匂うくらいが一番おいしい」とまで言い切ります。確かに、「○○は腐る直前が一番おいしい」という表現はよく耳にします。で、そこまでいうならということで「過熟成(2日熟成)vs.当日練り」をテイスティングしてみました。
作業条件:
加水48%
塩度10%
生地の練りには、大抵のうどん屋さんにある、低速型ニーダーを使用。
A: 2月7日に朝練り、野菜室に保管。二日後の朝に取り出し室内に放置し、生地が常温に戻った頃、一度軽く鍛え直して夕方延ばす。
B: 2月9日に朝練り。通常通りの手順で5時間熟成後、延ばす。
参考)生地を長時間熟成すると、軟らかくなり過ぎることがあります。このとき一、二回踏んでやると再度、生地の粘弾性が戻るので、これを「鍛え直し」といいます。鍛え直し後は、更に数十分寝かせてから延ばします。
延ばし工程:
Aは丸々2日以上熟成されていたので、自然脱気され、また粘弾性も少し劣化している分、延ばしやすい。一方、当日練りのBには張りがあり、また淡黄色が食欲をそそります。またこの違いは麺線にも現れました。同じ力で同じように延ばすと、どうしてもAが延びやすく、結果として薄く、そして細くなりました(素人の未熟さが露呈!)。
食味試験:
両者を並べると、Bの色、艶、張りが際だっている。長時間熟成させると、色落ちするのは仕方ない(新着情報#80)。Aにはもっちり感があるが、Bには張りがあり、食べていて歯切れがいいし、味も濃く感じる。3人の試食の結果は2:1でBが優勢、そして当日持ち帰った他1名もBを支持したので、結局3:1でBに軍配があがりました。
結論:
とりあえず今回は「朝練りの方がよかろう」という結果に相成りました。ただ次のような意見もでました:「何もつけずに食べると、物足りないくらいがいいのかも。もし、少し塩味が残っていて、うどんだけ食べておいしいと感じたら、今度はつゆ付きだと味が強くなりすぎるかもね」。つまり食べる条件が異なるので、それだけ判断が難しくはなります(単なるいい訳です)。この結果を冒頭の徳島のMさんに伝えたところ、「そりゃ、腕が悪いんやろ。今後いっぺん教えてあげようか」との暖かいお返事をいただきました。時期を改め、再度挑戦するつもりです。
追伸:「過熟成の方がおいしい」とか「通常熟成の方がコシがあってうまいよ」など、熟成時間について一家言あるお方は、よろしければ知らせください。