#133 無手勝流・武蔵野(風)うどんの作り方

うどんは好きだし、職業柄、避けても通れないので、県外にでたときは、できるだけご当地うどんを食べるように心がけています。ここ最近で印象に残っているのは、南から順番に(1)九州うどん(新着情報#071)、(2)鳴門うどん(新着情報#127)、(3)吉田うどん(新着情報#048)、(4)武蔵野うどん(新着情報#131)あたり、というかこれが食べたうどん全てです。そして行く先々で思うことは、うどんって小麦粉、塩、そして水だけからしかできていないのに、それぞれ実に個性的だということです。

九州のうどんは、多加水で練り、でんぷんがお湯の中に溶け出すのではないかと心配するくらいしっかりゆで、「もっちり感」がキャッチコピーです。釜揚げうどんなんかは、箸で持ち上げるときに気をつけないと、途中で「ぶちっ」と切れて、お湯がとんできそうな感じです。徳島の鳴門うどんは、わざとゆで置きにして、うどんの水分勾配が均一になったものを湯煎してだします。さぬき流に言うと、コシがなくなったうどんですが、これがとっても口当たりがよくて、何杯でもサラサラとお茶漬け感覚で入ります。個人的には、食感よりも味を優先する方なので、鳴門うどんは大好きです。

これら二つのうどんとは対照的に、富士吉田市の吉田うどんは、剛麺でとても硬いうどんです。また武蔵野うどんも、最近挑戦したのはどちらもかなり手強いうどんでした。さぬきうどんはコシがあるということになっていますが、吉田うどんや、武蔵野うどんに比べれば、さぬきうどんなんてずっと軟らかくて、扱いやすいような気がします。そこで、ふと思ったのが、うどんは実は「西軟東硬(せいなんとうこう)」じゃないのかと。うどんとは関連はありませんが、小麦も同じ傾向があって、同じ品種でも北に行くほど高たんぱくになり、結果として硬くなる傾向にあります。

話は、武蔵野うどんに戻り、最初武蔵野うどんを紹介してくれた智春くんの話によると、武蔵野うどん全てが硬ゆでというわけではなく、中には10分以上ゆでるものもあるらしい。でも、今回挑戦した武蔵野うどんはどちらも硬派で、そのうどんを以下、簡単に再現してみました。

無手勝流・武蔵野風うどんの作り方

①豚のつけ汁を用意。
②5分であげる。
③水で締めるが、冷たくし過ぎない(芯は少しぬくもりが残るくらい?)。

出汁にはラードが入って、豚汁風になっています。で、うどんは硬い。

出汁にはラードが入って、豚汁風になっています。で、うどんは硬い。

この3つのポイントを押さえたところ、今回食べた武蔵野うどんっぽい感じに仕上がりました。ただ、カンジはよくでるんですけど、一つだけ問題があります。こういった硬めのうどんは、でんぷんがα化(糊化)されてないので(早い話、生煮か)、食べた後もうどんが数時間、お腹の中に留まっているのがわかります。つまり、よく言えば腹持ちがいいし、別の言い方をすれば、腹にもたれる感じ。しかし、智春君によると武蔵野うどんは、別名「糧うどん」といって、ごはんの代わりになるものだから、わざとお腹に残るようなものにしたという考え方もできます。

さぬきでは、「うどんは別腹」といい、たとえ腹一杯でも「うどんの一杯くらいはどこにでも入るよ」ということになっています。これはうどんが充分に調理され、糊化され、消化吸収がいいので、別腹という表現ができたのであって、武蔵野うどんは「食後にもう一杯」とはなかなかいかんですね。