#145「さぬきの夢2000」うどんテイスティング・・・製粉方法の違い

うどん屋のAさんは研究熱心な方で、よく試作品をもってきてくれます。気合いを入れて打ったうどんなので、こちらもそのつもりでうどんテイスティングをするように心がけています。今回は、製粉方法および熟成時間の違いによる「さぬきの夢2000」うどんのテイスティングでした。試食したのは次の通り:

①ロール製粉で挽いた小麦粉を使用し、製麺(ロール製粉&標準熟成)。
②粉砕機で挽いた小麦粉を使用し、   製麺(粉砕機製粉&標準熟成)。
③粉砕機で挽いた小麦粉を使用し、   製麺後2日間熟成(粉砕機製粉&過熟成)。

テイスティングのテーマは二つ。ひとつは、ロール製粉と粉砕機で挽いた小麦粉で作ったうどんではどう違うのか。二つ目は、過熟成させるとどうなるかです。過熟成のうどんについては以前試したこともあるので、(新着情報#126)もご参照ください。一般に粉砕機(もしくは石臼)による製粉は、小麦を一度に細かく砕いてしまい、それをひと種類の網で篩うので、表皮の小麦粉への混入が避けられません。

一方、現在の製粉方法であるロール式製粉(新着情報#051)は、これは小麦を表皮と胚乳部分とを取り分けるときに、一度に粉にせずに、「粗砕き→篩い分け(ふるいわけ)」を繰り返し、小麦を段階的に小さくし、最終的に小麦粉にします。こういった回りくどい方法をとる理由は、小麦の表皮の部分が小麦粉に混入するのを極力避けるためです。パンやお菓子では、表皮が混入した方が、風味や噛みごたえが増して好まれることもあります。しかし、麺についてはのど越し、なめらかさ、色調、食味などを考慮すると、一般にはグレードの高い、表皮の混入の少ない小麦粉が支持されています。

上記のうち②と③は粉砕機を使用しているので、表皮部分の混入が避けられず、①に比べてかなり色調が劣ります。また③は生地を過熟成させているので、更にその傾向が強くなります(以前、過熟成させたうどんの結果はこちら)。実際、3つのうどんをゆであげた結果は、画像のようにその差異は明らかでした。これを3人でテイスティングしたところ、結果は次のようになりました。

色調:①>②>③
味 :①>②>③
香り:①>③>②
総合評価:①>②>③

以下簡単に気づいた点を書き出してみると:

  • ①は新鮮で、「さぬきの夢2000」特有の香りがある。②も香りは感じるが、それ以外の雑味もあり、③はその傾向が更に強い。
  • ②や③は味見程度であれば、その強い風味が支持されるかもしれないが、食べ進むにつれて、雑味が勝り、一玉食べ終わる頃には、最初の印象はかなり変わる。
  • ①は黄色味、艶もあるが、③は見るからに黒く、なかなか食指が動かない。

というわけで、一般には①のロール製粉によるうどんが、支持されそうな結果になりました。ただ、粉砕機(もしくは石臼)製粉では、考慮すべき点がひとつあります。それは、ロール製粉に比べ表皮部分が混入し易いため、製粉前の精選工程では一層の徹底が求められることです。つまり表皮が混入するので、不十分な精選では、ちりやほこりなどの不純物が、一緒に小麦粉に取り込まれる可能性があります。でも小規模な設備では、精選工程が充分でない可能性があり、そのときはできあがりの小麦粉にはかなりの雑味が含まれることになります。一般の食材を調理するときも、きれいに洗ってないと味がよくないのと同じことです。よって、精選が完璧におこなわれると、また異なった結果になるかもしれません。