#147 スイスの小麦粉で餃子の皮を作るとどうなるか?
スイス在住の小西さんから「新着情報#58のスーパーの棚に並んである小麦粉(オレンジの袋入)で餃子を作るとどうなりますか?」という質問をいただきました。お問い合わせの袋を検索してみると、次のページに商品説明がありました。
https://www.leshop.ch/leshop/Main.do/direct/de/Supermarkt/-18118/-22297/272578#/de/Supermarkt/_/_/272578_Halbweiss-Mehl
袋にはドイツ語とフランス語で併記されていますが、ドイツ語部分は「Halbweiss-Mehl Revitaminiert」、直訳すると ”semi-white flour, vitamin enriched”、つまり ビタミン強化した準白小麦粉となります。餃子とは関係ありませんが、スイスの人たちは、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語などを公用語としています。日本語しか話さない私たちにとっては、なんで人口700万人余りの国でそんなに多くの言語が必要なのか理解できません。だって容器にしろ、パンフレットにしろ最低3カ国語くらいは表記してないと、全国に流通できないので、なんとも面倒な気がします。
話は戻って、上記の小麦粉は具体的には、灰分0.62~0.65、たんぱく質11%程度のものを指すそうです。そしてこれを日本の規格にあてはめると、準強力の2等粉となります。では、2等粉で餃子の皮を作るとどうなるか?きっと、日本の餃子のように、つるつるとした食感にはならず、少しくすんで表面がべとつくんじゃないかと推測します。またたんぱく質が11%と多めなので、きっと噛みごたえのある、もっちりとした皮になるかも知れません。でも一方、「ちょっとべとべとし過ぎ」と感じる人がいるかもしれません。いずれにしても元々の小麦粉が違うので、餃子も違って当然です。
ところでこの小麦粉の用途は何かというと、スイスという土地柄、また小麦粉のスペックから判断しても、パン以外に考えられません。で、後で聞いたところによると、スイスに存在する小麦粉はこの手の強力粉しかないそうで、何でもかんでもこの強力粉で作ります。もしケーキなどの「ふっくら感」をだしたいときは、でんぷん(スターチ)を混ぜて、たんぱく質の量をさげるそうです。しかし、あまりでんぷんを入れるということは、うどんも同様、小麦粉の風味が薄れるので注意が必要だと思います。
日本は、製粉産業では後発でしたが、食生活は和風、洋風、中華などありとあらゆるものが揃っているので、小麦粉についてもパン、ケーキ、ラーメン、うどんなど、それぞれ専用の小麦粉が用意されています。製粉後発国の日本ではありますが、いまや小麦粉の種類および品質においては間違いなく世界一です。一方、欧米は小麦粉の歴史は古いのですが、用途がパンが主体なので、ほとんどが強力粉中心となっています。
折しもジュネーブでは21日よりWTOの閣僚会議が始まりました。工業製品を大量に輸出する日本は、農業分野での大幅な譲歩を迫られています。しかし一方では食糧自給率は先進国最下位の39%、また昨今の穀物暴騰の背景や要因を考慮すると、自給率は1%でも上げたいと思うのは自然な発想です。この矛盾をどう解決できるのか、なんとかうまくまとまってほしいと願わずにはいられません。