#159 今時の小麦製粉②・・・小麦の精選
工場に搬入された小麦は、いきなり製粉されるわけではありません。きれいな小麦粉になるためには、これから色々な下準備が必要です。野菜でも買ってきてそのまま食べるわけではありません。傷んでいる部分は取り除き、洗ってきれいにします。小麦も同じでサイロからやってきた小麦は、小麦以外の様々な不純物(これを夾雑物(きょうざつぶつ)といいます)が含まれています。これら夾雑物をきれいに取り除く工程を「精選工程」といいます。
夾雑物には様々なものがあります。典型的なものとして、石ころ、麦わら、他の穀物(とうもろこし、大豆など)があり、また小麦であっても身の細ったものからは、良質の小麦粉はとれないので、精選工程で除去します。もしこの精選工程が不十分であっても、夾雑物も小麦と一緒に製粉され、文字通り粉々になってしまい、見た目にはその違いはあまりわかりません。でも料理同様、本来必要でないものが入ると雑味が増え、うどんにしたときの色、味、風味などの品質は当然劣化します。「ちゃんとした精選」、これが良い小麦粉をつくるための最初のステップです。
精選工程で使用する機械装置を説明しても、あまり意味はありませんが、簡単に説明しておきます。まず搬入された小麦は、グレーン・セパレータで予備精選をおこないます。つまり小麦と極端に大きさが異なる、砂や麦わらなどは予めここで選別します。次に小麦と大きさがよく似ている小石は、ドライストナーで比重の違いを利用して選別します。小石はそんなに多く含まれている訳ではありませんが、たとえ僅かでもここを素通りすると、後で小麦を挽砕するロール機を傷める原因になり、また当然品質の劣化につながるので注意が必要です。
雑草の種子や身の細った小麦は、コンセントレーターでやはり比重の違いを利用して選別します。最近は、ドライストナーとコンセントレーターの両方の機能を兼ね備えたコンビネーターというコンパクトな選別機もよく利用されています。
様々な選別機を利用して、小麦だけを取り分けても精選工程はまだ終了したわけではありません。小麦自体にまだ塵埃(じんあい、ちりやほこりのことです)がついています。そこで精選の最終段階として、小麦をきれいに磨いてやります。ここでは小麦をスカラーという回転している円柱状の金網の中を通過させ、小麦同士、または小麦と金網との摩擦で、小麦についている汚れをとってやります。そして最後に、アスピレーターという機械の中で、小麦を強い空気の流れにさらし、表面の汚れを吹き飛ばしてやります。このようにして、工場に搬入された小麦は最終的に、粒の揃ったきれいな小麦だけが残ります。
精選することにより、このような夾雑物が取り分けられます。もちろん、どれも同じ割合で含まれているわけではなく(そんなに入っているとえらい事です)、取り分けたものを集めたものです。
左下より、時計回りに:
①小麦の正粒
②石ころ
③麦わらや他の穀物など
④細った小麦、他の穀物の種子など。