#166 今時の小麦製粉⑨・・・小麦粉の再篩(さいふるい)
できあがった小麦粉は、いったん貯蔵サイロに送られますが、その前にもう一度、シフターを通り篩にかけられます。この工程を再篩工程といいます。このとき目開き(めびらき=目の大きさ)は8XX~11XX、つまり115~180μm(ミクロン)なので、これは小麦粉であれば楽に通過できる広さです(新着情報053)。再篩の最大の目的は異物混入の防止です。いくら完璧だと思っても、世の中に絶対はなかなかありません。ここが製粉工程での最後の関所なので、もし工程中のどこかで異物が入ったとしても、ここで捕獲できるようになっています。
また各シフターの網が破れていないかどうかチェックすることも可能です。もしここで常にオーバー(篩を通過しなかったもの)が発生しているようであれば、それは小麦粉よりも大きなストックが混じっていることになります。つまりどこかの上がり粉の網が破れていて、ふすま片が落ちてきていることになります。ただ小麦粉はいくつかの上がり粉のグループからできているので、それがどこの網であるかを特定するのは簡単ではありません。何十年と経験を積めば、ストックの流れの多い少ないで、「ここがが怪しい」と当たりとつけることも可能ですが、それでもなかなか特定できません。そういうときは、面倒でもそれぞれの上がり粉を、別々に篩ってみます。そしてオーバーがでているのをみて、初めてどこが破れているのかがわかります。
ところで一般的かどうかは知りませんが、ここの1等粉再篩シフターには「1FD」という名前がついています。色々考えた末に、「これはきっと ” 1st flour dressing”(1等粉再篩)を意味するんだろう」ということに落ち着きました。dressには「仕上げる」という意味がありますが、昔の西洋の製粉工場では最終工程、つまり仕上げの意味で使っていました。昔は製粉設備もそんなによくなかったので、途中でふすま片なんかが混入することも珍しくなく、それを取り除くという意味で、「仕上げ工程」になったのではないかと推測します。そして日本ではそれが転じて最終篩、つまり再篩になったんじゃないか、っと。
そして貯蔵サイロに保管されている小麦粉が、実際にパッキング(袋詰め)されるときには、もう一度更に別の「再篩」を通過します。これは一見無駄なように思えますが、小麦粉を移動させるときは、移動途中に異物が混入する可能性があるので、必ず最終出口の手前で篩うのが鉄則です。ですから工場内では2度、異なる再篩を通過した後、パッキングされるので、小麦粉の袋の中には小麦粉以外のものは原則として入らないようになっています。
最終篩を通過した小麦粉は直ちにパッキングされ、25kgの業務用袋なら約15秒で自動充填されます。そしてこれが50袋ひとまとまりとしてパレットに積まれ、倉庫で出荷を待ちます。現在の製粉工場は、段階的製粉方法を採用しているためやたら機械類が多く、そのために製粉産業は装置産業となっています。機械化が進んだため、単純作業からは解放されましたが、それぞれの機械の調整はやはり人の手によります。
最新鋭の製粉工場では、たった一人でモニター画面を見ながら集中管理できるそうです。ただ、個人的にはあまりに自動化され、ボタン1つで何でもできてしまうと、その内に何をやっているのかわからなくなるんじゃないか、と思ったりもします。だから差し支えない程度の手動操作はあった方がいいんじゃないかと、考えたりもします(ひがみか?)。