#172 (Q)うどんは投入直後になぜ硬くなるのか?

どなたか忘れましたが、以前次のような質問を聞かれました。「うどんをゆでるために、沸騰しているお湯の中にうどんを投入すると、短時間ですが、うどんが硬直するけどなんででしょう?」。確かに、投入直後は、一旦硬くなって、その後少し間をおいて、軟らかくなります。普通に考えると、熱せられるのでそのまま直ぐに軟らかくなりそうですが、なんか不思議な気がします。

色々考えてみましたが、なかなか筋の通った理由が見つかりませんので、うどん博士の三木英三先生に聞いてみたところ、快く答えいただきました。以下は教えてもらった内容ですが、あくまでも予想の範囲で、裏は取っていないので断言はできません。また乾麺については最初から硬いため例外になりますが、予めご承知おきください。

【実験内容】
常温保存と冷蔵庫保存(低温)の2種類のうどんを用意し、これを2人(三木先生と研究室の学生Xさん)でゆでてみる。投入後、硬直時間がどの位持続したかは、それぞれ箸で攪拌しながら、抵抗が小さくなった時点を各自の独断で決定。

【実験結果】
日時:2008年9月初旬

 硬直持続時間(各自の独断!!)
うどん博士 学生Xさん 平均時間
 A:室温保存の生うどん
 5-20秒  5-25秒  18秒
 B:冷蔵庫(4℃)保存のうどん
 6-25秒  8-34秒  23秒

 

【うどん博士の考察】
一般に、物質の温度が上昇すると粘弾性係数は小さくなりますので、沸騰水に入れて硬くなるのは不思議な現象です。上記の実験の結果から推測したのは、生うどんに存在する空気の膨張が考えられます。空気の膨張によって、生うどんが体積膨張を生じて張力が発生し、硬くなったような挙動を示すのではないかと思います。

【勝手なまとめ】
ということで、簡単にいうと「うどんの中の気泡が膨張するため」ではないか、ということになりました。しかしこれだけでは、今一つ腹によく落ちんところがあるので、更に聞いてみて、次のように無理やり自分を納得させました。投入直後は気泡が膨れ、生地の中で突っ張るので、うどんが硬くなる。しかしその内に生地自体が熱によって軟らかくなり、こちらの方の効果が勝るので、全体として軟らかくなる(尤もいつまで経っても硬いままだと大変ですけど)。

また冷蔵保存しているうどんの方が、硬直持続時間が長いのは、生地自体が軟らかくなるのにそれだけ余計に時間がかかるからだと考えれば、一応筋は通ります。何れにしても、現実問題として投入直後に強く攪拌するのはよくありません。それに私たちは経験則としてこの事実は知っているので、いきなき強くは攪拌しません。覆水盆に返らず。一度折れたうどんは、元には戻りませんので、最初はどうか気をつけてゆでてください。