#181 豪州・讃岐うどん対決
近くのうどん屋の大将が、「讃岐の小麦とオーストラリアの小麦でうどん作ったら、どっちが人気あるやろか?」と言うので、「それはおっちゃん、ええ企画やわ。いっぺんやってみまい」ということになりました。豪州産は言わずと知れたASW(オーストラリアン・スタンダード・ホワイト)、讃岐産は「さぬきの夢2000」。農政事務所の統計データによると、現在さぬきでは毎年6万トン以上の小麦粉がうどんに使われています。ただこれには、専門店で消費されるうどんは入ってないので、これも含めるとおよそ7万トンは使用されると推測します(新着情報#137さぬきうどんの生産量)。一方、「さぬきの夢2000」の収穫量は5,000㌧でこれは小麦粉換算で約3,000㌧となり、全体の5%未満にしか過ぎません。つまりほとんどの讃岐うどんは、ASW が使用されていることになります。
ここで2つの小麦について簡単におさらいしておきます。ASWは年間100万トン輸入されている麺用小麦で、今やうどんといえばASW といっても過言ではありません。タンパクが充分に含まれているので、作業性は抜群。多少加水が多くても問題ないし、熟成時間は1日でも2日でもちゃんとすれば大丈夫です。小麦を連想させる淡黄色の麺は、食欲をそそるし、現在向かう所敵なしです。一方、「さぬきの夢2000」は食感、味ともに抜群ですが、低タンパクのために作業性に難ありというのが、唯一の弱点です。つまり「さぬきの夢2000」でおいしいうどんを作ろうとすれば、結構気を使うことになります。毎日何千人というお客を捌くところは、ある程度作り置きをする必要があるので、はっきり言って不適です。で、結局うどんが作りづらいという理由で、使いたがらないお店があるのも事実です。
で、前置きが長くなりましたが、今回豪・讃うどん対決をすることになりました。やり方はこうです。同じ製法で作ったうどんを、同時に湯煎し、大きい丼と小さい丼に入れて食べ比べてもらいます。両者とも150gの玉なので、両方食べるとそこそこお腹が膨れます。このとき小麦の種類は伏せてありますので、食べている人にはどっちがどっちかわかりません。よって、予備知識無く公正に食べ比べができます。食べ終わると、好きだった方の丼に○をつけ、投票箱に入れてもらいます。蛇足ながらうどんは2つ一緒でたったの150円、それに私は天ぷら3つ食べたので併せて300円でした。
はっきり言って、どんな結果になるかは全く見当が付かず、「もしASWの得票が多かったらマズイなあ」、とか「本当に違いはでるんやろか?」などやきもきしました。しかしご覧の通り、235:131(ほぼ2:1)で「さぬきの夢2000」うどんが好きな人が多いという結果になりました。これほどきれいに違いがでるとは、意外でしたが、うどん通の方からは、「こっちがつるつるしているので夢2000やな」とか、「夢2000はつるつる、もちもちしていて美味しかった」という声も聞かれ、さぬきうどんの面目躍如でした(ほんまによかった!)。ただ、当日はイベントを知らなかったおっちゃんもいて、「なんでいつものげそ天がないんや?」、「えぇ!今日はぶっかけうどんないんか?」と声高のおっちゃんもいましたが、何とかご理解を頂きました。
後で「おっちゃん、なかなか好評やったで。またするんな?」と聞いたら、大将曰く「うん、そやな。まあ考えとくわ」。イベントは僅か4時間でしたが、2つずつ湯煎しないといけないので、おっちゃんの疲労度はかなりのもので「いつもの倍もぬくめたんで、腕がぱんぱんや。ほんまにしんどかったわ」というのが本音だと思います。しかし「さぬきの夢2000」の生の評価を聞くことができた、有意義なイベントでした。大将、どうもありがとうございました。