#201うどんは世界に通用するか

海外で日本料理と聞けば、刺身、寿司、天ぷら、このあたりが定番でしょう。ニューヨークのレストランではアメリカ人が器用に箸を操り、刺身、天ぷらを食べ、中東でも回転寿司が大人気と聞くにつけ、その通りだと実感します。確かにどれも旨くて、日本を代表する料理に違いありません。しかし、よく考えてみてください。経済的理由は横に置いといて、お寿司が美味しいからと言って、毎日食べますか?天ぷらは上手いが、3日続けて食べると普通の方は、もっとあっさりしたものを食べたいと思うはずです。つまりこれらは全て日本を代表する料理には違いありませんが、毎日食べるにはちょっと、くどくて重たすぎると思います。

それに対して、麺類は日本中どこでも毎日ように食べられています。さぬきであれば、毎日昼食がうどんでも別に変わったことではないし、若者に人気のラーメンも、全国各地で毎日のように食べられています。つまりうどん、そば、ラーメンなどの麺類は究極のB級グルメであり、これこそ本当の国民食であると言えます。ではなぜこれら麺類が海外で受け入れられないのか?

その原因は、「啜(すす)る音」以外にないと考えます。食事中の「ずるずる」という音が、動物的イメージを連想させ、これが精神的な障壁となって、なかなか受け入れられないと、以前どこかで聞いたことがあります。かけうどんやラーメンは熱いので、音を立てずに食べようとすると火傷をします。「ずるずる」と音をたてることによって、熱い麺と口の間に空気の層ができ、「あっちっち」と言わずに美味しく食べることができます。もちろん冷ませば、音を立てずに食べることができますが、それでは麺が伸びてしまい、また何より美味しくありません。熱々を食べるからこそおいしいのです。

ざるうどんやざるそばであれば、冷たいので啜らずに食べることは可能です。時々、麺類が好きだという外国人もいますが、良く聞いてみるとそれは決まって、ざるうどん、ざるそばなどの冷たい麺です。彼らは適量を出汁につけ、それを口の中に放り込み、口を閉じ、もごもごしながら音を立てずに上手に食べます。しかしこの方法は私達日本人には馴染んでいないので、やってもなかなか食べた気がしません。

これまでのところ、熱々のラーメンを目の前で見事に啜って見せてくれた外国人は、というか偶然居合わせただけですけど、これまでのところただ一人だけです。何年か前、東京・虎ノ門のとあるラーメン屋に入り、注文を終え、ふと横をみると、なんと少し首を傾げながら、見事に啜っていました。日系人ならいざ知らず、正真正銘の外国人が啜っているのを見るのはこれが初めてで、かなり衝撃的でした。世界が真に(?)グローバル化し、この文化的壁がなくなったときに、初めてうどん・ラーメンは代表的な日本料理になれるのかも知れません。