#219 うどんテイスティング・・・ASW vs きたほなみ
現在、日本で製粉される小麦はおよそ600万トン、そのうち国産小麦(以下内麦)は約90万トンで残りが外国産小麦(以下外麦)となり、小麦の自給率はおよそ15%。但しこの15%というのは内麦の本当の実力ではなく補助金によって支えられています。更に言えば、その補助金は基本的には、マークアップと言われる外麦を高く販売することによって捻出される利益によって、賄われています。
さて話は戻り、内麦は90万トンといっても、北海道と九州でその80%以上を占め、更には北海道だけでも全体の半分以上の50万トンを生産します。そしてその北海道でもダントツに多く栽培されている品種がホクシンで、年間40~50万トンも生産されています。ホクシンは主として麺用途に使用されるので、うどんなんかで「国産小麦使用」とか書いていたら、きっとその多くはこのホクシンを使っているに違いありません。
しかし近年ホクシンより優良品種として注目されているのが「きたほなみ」です。きたほなみは、反収(一反あたりの収量)が多いこと、また製粉歩留まりが良好なこと(つまり小麦粉がたくさんとれる)などのメリットが評価されて、ホクシンの後継品種となることが既に決定しています。平成20年は試験栽培だけでしたが、昨年(平成21年)は、6598㌶が作付けされ3万トン以上が収穫されました。そして今後順次切り替え、平成23年産にはほぼ全量がホクシン→きたほなみに切り替わる予定です。
そこで今回は少し早いですけど、平成21年7月に収穫されたきたほなみを製粉した小麦粉を入手したので、早速乾麺にしてみました。比較する相手は当然オーストラリアのASWです。ASWは現在年間約90万トン輸入されていて麺用小麦としては日本でもっとも多く使用されています。作業性に関しては、どちらも全く問題ありません。ホクシン同様きたほなみもしっかりとしたグルテンがとれるので、作業性は非常に安定しています。
二つをゆであげた結果は次の通り。左がASW、右がきたほなみです。以下項目別に簡単な比較をおこないました。
色調:
ASWは持ち前の淡黄色がきれいに映えています。一方、きたほなみは少しくすんだところがありますが、これは内麦一般に共通することです。一般的には淡黄色の方が支持されそうな気がしますが、中には少しくすんでいる方が、小麦らしいと感じる人もいます。実際、武蔵野うどん(東京の西部)は今でも、白いうどんではだめで、かなり色がついていないと受け入れてもらえないと聞きます。
食感:
噛んだときに跳ね返ってくる感覚、つまり弾性はASWの方が大きいようでした。きたほなみはどちらかと言えば、しっかりとした感じで、これがきたほなみの一つの特徴でしょう。
食味:
ASWはほんのりと小麦の風味が感じられるのに対し、きたほなみはさっぱりとした爽やかな食味でした。
それぞれの特徴が異なるので、それぞれの好みに応じて支持されると考えます。種類が増えるということは、それだけ選択肢が拡がるので、消費者にとっては良いことです。食の多様性は多いに歓迎されるべきです。