#227 うどん生地⑦・・・垂直方向の変化(ロール圧延の場合)

生地を延ばすには、大きく分けてロールによる圧延と、麺棒による手延ばしの方法があります。更に同じロール圧延でも、鍔付ロールと鍔なしロールがあり、それぞれ生地の延び具合が異なることも確認しました。また麺棒による圧延は、一見グルテン繊維はでたらめに形成されそうですが(つまり方向性をもたない)、実は放射状に形成されます。よって手打ちうどんは、どんなに均等に切っても、その部位によってゆでると太くなったり細くなったり、また縮れたりすることもわかりました。

しかし何れの場合も結局のところ、根本的な原理原則としては、生地が延びた方向に沿ってグルテン繊維も延び、そのグルテンの方向性がゆでた後のうどんの形状を決めることになります。但し、これまで見てきたグルテンの方向性は全て平面上、つまり真上から見た変化で、垂直方向については考えていません。よってここでは生地を延ばすときには、垂直方向ではどんな変化が起こるのか見てみます。

といっても、実際に生地の一部を着色し、それを延ばした結果を観察するのは心技体(特に気合いというか根性)が揃わないと難しいので、ここでは他の参考文献からの丸投げ、請売りになりますが、どうかご了承ください。

生地を延ばしたとき、平面上のグルテンの展開方法を考えたときには、ロール製麺と手打ち製麺とは別々に考えたので、ここでも最初にロールを使って圧延することを考えます。次の図はロールに入れる直前の生地を真横から見たところです。お餅のように分厚く描いていますが、これは着色した部分が良くわかるように誇張しています。そしてこの生地をロールに投入するとこの黒い部分はどのように変形するか想像してみてください。ここではありそうな可能性として3つ挙げてみました。

多分普通に想像にすれば、着色した部分はそのまま広がり、(A)のように平らになるのでは、と考える人が多いと思います。しかし少し考えると、厚い生地が狭いロール間隙を通過するときは、受ける圧力を少なくするために、「できるだけ高さを低くしようとする力が働くはず」なので、ロールに接してない中間部分は前後どちらかに移動しそうだということも、一応理解はできます。ではその場合、「中間部分は前方に飛び出るのか、それとも後方に押し出されるのか?」と聞かれると、それ程自明なことでもありません。

そこで一度、長方形の生地をロールで圧延したとき、上からの平面図はどのように変化したか思いだしてください(#221)。このときは鍔付、鍔なしロールいずれの場合も生地は後方に延びました。よってそう考えると(?)、「中間部分は後方に押し出されるよ」と言われると、なんとなく「ああ、そうか」と信じることはできると思います。っで、結局のところロール圧延したときには、垂直方向は変化としては、Cの中心部分が後方へ押し出されるのが正解です。つまり圧延されると後方への楔(くさび)型となり、圧延されて薄くなるにつれその楔の角度も小さくなり、最終的にはほぼ底面と平行になります。