#232 さぬきの夢2009

現在さぬきで耕作されている小麦である「さぬきの夢２０００」の後継品種としては、「香育２０号」と「香育２１号」が有望品種として候補に挙がりました。そして(#210)でご報告したように、栽培適性、製粉適性、製麺適性、実需者アンケート（うどん店主による評価）、更にはうどん店での試食アンケートなどすべての点において、「香育２１号」が後継品種に相応しいということになり満場一致で決定されました。「香育２０号」も素晴らしい品種でしたが、「香育２１号」は国産小麦らしいというか、「さぬきの夢２０００」の特長を受け継いだというバージョンアップ版であるという点が評価されたようです。

ところで「香育２１号」という名前は、香川農業試験場において品種の育成段階で使用している系統名のことで正式名称ではありません。例えば、「さぬきの夢２０００」のというのは、正式な品種登録名ですが、この系統名は香育７号でした。このときは、その登録出願年が西暦２０００年であったことにちなんで、「さぬきの夢２０００」と命名されました。つまり系統名が「香育７号」であり、小麦の正式名称である品種登録名が、「さぬきの夢２０００」です。そして当時は、このインパクトがあまりに大きかったために、この小麦を製粉してできた小麦粉、そしてそれを練って作ったうどんもすべて、「さぬきの夢２０００」と呼ぶことにしました。つまり小麦も小麦粉も更にはうどんも、全て「さぬきの夢２０００」と呼んでいました。

このような背景のもと、今回「香育２１号」が後継品種に決定されました。すると当然その品種登録名を決める必要があります。そしてその名前の決定にあたっては「推進プロジェクトチーム」という場で大いに議論され、その大勢は「せっかく『さぬきの夢２０００』という名前が定着してきたので、品種が変わっても同じ名前でいこうじゃないか！」というものでした。この案は、従来の包装資材も無駄なく使用できるので、妥当な案ではあったのですが、ここにひとつ問題がありました。それは「さぬきの夢２０００」は「香育７号」の正式名称として既に使用されていることです。つまり「香育２１号」には、品種登録名として「さぬきの夢２０００」をつけることはできないし、よって「さぬきの夢２０００」という小麦を使用していないのにも拘わらず、それからできた小麦粉やうどんを「さぬきの夢２０００」と呼ぶのはちょっとマズいということです。

そこで製品については、これまで馴染みのある「さぬきの夢２０００」のイメージを残しつつ、しかもこれからずっと慣れ親しんでもらえるような名前ということで知恵を絞った結果、「さぬきの夢」にしましょうということで落ち着きました。そして品種登録名としては、前回同様出願年にちなんで「さぬきの夢２００９」に決まりました。言葉で説明すると解りづらいので、次の表をご覧ください。つまり後継品種については、小麦の名前が「さぬきの夢２００９」で、それを使用した小麦粉およびうどんは「さぬきの夢」と呼ぶことになりました。

「さぬきの夢２００９」は今年（平成２２年）は８０ｔ収穫予定で、今後徐々に作付を増やし平成２５年には全量切り替わる予定になっていますが、この移行期間中に「さぬきの夢２０００」と「さぬきの夢」が混在するのは、いかにも「やぎろうしい」ので（讃岐弁で、ややこしいという意味です）、それじゃあ統一ブランドとして「さぬきの夢」を使用しましょうということになりました。つまりこの期間中は、どちらの小麦で作った小麦粉、うどんでも「さぬきの夢」と呼んでいいということです。但し、「さぬきの夢２０００」小麦からできた製品を「さぬきの夢」というのは良いけれど、逆に「さぬきの夢２００９」の小麦からできたうどんを「さぬきの夢２０００」と呼ぶのは流石にダメです。非常に「やぎろうしい」事態ですけれど、簡単にいうとこれからは「さぬきの夢２０００」の代わりに「さぬきの夢」を使いましょうということです。

ただ今回の件ですっきり整理されたこともあります。それはこれから将来、いつの日か「さぬきの夢２００９」を凌ぐ新しい品種、「香育○○号」がいつか登場するでしょう。そのときはその小麦の品種登録名は、それを出願する西暦年に併せて、「さぬきの夢XXXX」にしましょうということが決まりました。しかしその場合もそれからできた小麦粉およびうどんは、同じ「さぬきの夢」を使用しましょうということも決定されました。色々ごちゃごちゃ申しましたが、後継品種の品種登録名は「さぬきの夢２００９」、そしてそれからできる小麦粉やうどんは「さぬきの夢」であるということを是非憶えておいてください。