#255 食品のエネルギー②・・・食物繊維のエネルギー

さて、食品のカロリー(熱量)は、大まかにいって含まれる三大栄養素にそれぞれのエネルギー係数を掛けて合計すれば良いことがわかりました。ここまでは至って簡単です。ところが食物繊維が絡んでくると計算が少しややこしくなります。普通、食物繊維は「食べ物のカス」と言われていて、消化はされず水分を吸収し、便のカサを増して柔らかくし、スムーズに排泄する働きがあると言われています。よってお恥ずかしい話ですが、食物繊維のカロリーはこれまでゼロであると信じて疑いませんでした。でもそうだとすると少しおかしなことがおきます。
実は、「炭水化物 = 糖質 + 食物繊維」という関係があります。つまりアトウォーター先生の方式に従えばどんなに食物繊維を含んでいても炭水化物全体の量が同じ食品であれば、それらは同じエネルギーであるということになります。しかし食物繊維相当分はカロリーがゼロだとすると、これはどう考えても筋が通りません。小麦粉を例に取ると、表皮のほとんどは食物繊維なので、普通の小麦粉も全粒粉も炭水化物の量が同じであれば、そのカロリーも同じということになりますが、それはちょっと変です。だから食物繊維を多く含んでいる食品については、ちょっと妙な話になります。

そこで「これはおかしい」と思い、少し調べてみると次のような事実がわかりました。実は、食物繊維と一口にいっても色々種類があるようなのです。つまり食物繊維そのものは胃や小腸では消化されずに素通りするのですが、その次の大腸では、腸内細菌による発酵を受けて吸収され、エネルギーに変換されるものがあるそうです。で、もし大腸で100%発酵・分解されたとしたら、私たちがその食物繊維から得ることができる熱量は、1gあたり2kcalに相当すると言われています。もちろん分解されない食物繊維もあります。言い換えると一口に食物繊維といってもその発酵・分解に程度の差があるのです。この点を考慮して、食物繊維のエネルギー係数について提案されている方法が次のものです:

①発酵・分解率が75%以上のもの        ・・・ 2kcal/g

②発酵・分解率が25%以上、75%未満のもの  ・・・ 1kcal/g

③発酵・分解率が25%未満のもの        ・・・ 0kcal/g

それでは私たちの関心がある、小麦ふすまはどこに分類されるかというと、実はまだデータが充分に整っていないので、エネルギー係数が確定するまでは、暫定的に2kcal/gを用いることになっています(なんか釈然としないぁ)。
以上の予備知識を基に、再度エネルギーを計算してみます。今、全粒粉もしくはふすまの入った小麦粉100gを分析したところ、たんぱく質12.3g、脂質1.4g、炭水化物73.7gあったとします。食物繊維を考慮せずに単純に計算すると、この小麦粉のエネルギーは、それぞれのエネルギー係数を掛けて、12.3×4(たんぱく質の熱量) + 1.4×9(脂質の熱量) + 73.7×4(炭水化物の熱量) = 356.6kcalとなります。
一方、同じ小麦粉について食物繊維を測ったところ7.4gあったとします。すると糖質=炭水化物 - 食物繊維 = 73.7 - 7.4 = 66.3gとなります。よってこれらを基にエネルギーを細かく計算すると、12.3×4(たんぱく質の熱量) + 1.4×9(脂質の熱量) + 66.3×4(糖質の熱量) + 7.4×2(食物繊維の熱量) = 341.8kcalとなります。

つまり同じ小麦粉でも、計算の方法によって、そのエネルギーは356.6kcalもしくは、341.8kcalとなり、妙な話ですが、どちらも間違いではありません。ただ340.4kcalの方が、より正確ですし、今後小麦ふすまのエネルギー係数が正確に得られると、もう少し小さくなる可能性があります。ちなみに弊社事で申し訳ありませんが、上記の341.8kcalは、弊社の粗挽きふすま入り強力粉、ブラウワーについて計算したものです。