#278でん粉の性質その⑦・・・うどんと関係の深いでんぷん2種
でん粉には様々な種類がありますが、ここでは特にうどんに馴染みの深い「タピオカでん粉」と「サゴヤシでん粉」の2種を紹介します。これらはきっと食品研究者たちが研究を重ねながらそれぞれのでん粉特長を見つけ出し、そしてうどんに応用したに違いなく、今ではどちらも麺業界にとっては欠かせない存在になっています。
①タピオカでん粉
タピオカでん粉という言葉は最近よく耳にするのでご存知の方もいるでしょうが、これはキャッサバというイモの根茎から製造されるでん粉です。キャッサバの原産はメキシコ、グアテマラ、ブラジルなどの中南米ですが現在は熱帯地方で広く栽培され、日本には東南アジアから輸入されています。キャッサバのでん粉をタピオカと呼ぶのは妙な気がしますが、これはアマゾンのトゥピ語ででんぷん製造法を「tipi’oka」と呼ぶことに由来するそうです(ウィキペディア)。キャッサバの茎は成長すると2~3mの高さになり、地下には紡錘形の根茎が放射状に群生しています。ちなみに紡錘形とは、円柱状で真ん中が太く、両端が細くとがった形のことをいい、身近な例ではサツマイモみたいなカンジでしょうか。
タピオカでん粉は小麦粉に混ぜ、原料の一部として使用します。タピオカでん粉を入れるとどうなるか簡単に説明します。まずイモでん粉の特徴として、糊化開始温度が低いので(#276)、これは早く調理されることを意味します。つまりタピオカを多く入れるほど、でんぷんが早く糊化されるので、小麦粉だけのうどんに比べて湯で時間が短くなります。また最高粘度も高いので、タピオカを入れると噛んだ時のもちもち感がアップします(#272)。またこれ以外にも冷凍保存性が向上するので、冷凍うどんによく利用されるなど、加工上の様々な利点があります。ただ良いことばかりではありません。タピオカを入れるほど小麦粉が減ることになり、その結果小麦の風味が薄れてしまうという欠点もあります。よって入れるか入れないか、もしくは入れるとしてもどの位入れるのかは個人の好みによって分かれるところです。
②サゴヤシでん粉
サゴヤシはマレーシアやインドネシアの赤道を挟んだ南北緯10度の低湿地に自生している正真正銘の椰子の木です。ヤシの木からでんぷんが採れると聞いてもピンときませんが、サゴヤシはこの幹の部分に20~25%のでん粉を含んでいます。伐採されたサゴヤシは、その場で長さ1mに輪切りされ、このドラム缶を小さくしたようなものをサゴログといいます。そしてこのサゴログで筏をつくり、水路にてでん粉工場に搬入され加工されます。
サゴヤシでん粉は現地では食用に利用されていますが、日本ではうどんを打つときの打ち粉として利用されます。つまり生地を延ばして切るときに、うどんがくっつかないようにするのが目的です。サゴヤシが好まれる理由は少量でうどんのくっつきを防止でき、飛散も少なく、またゆでたときに茹で湯が濁りにくいといった特長を兼ね備えているからです。以前は、馬鈴薯でん粉やコーン・スターチが使用されていましたが、現在はサゴヤシが主流になっています。
打ち粉という洒落たものがなかった時代は、小麦粉そのものを打ち粉として使っていました(これを友粉もしくは共粉といいます)。これは短時間であれば問題ありませんが、時間とともにうどんと同化ししまうので、うどんがベトベトにくっついてしまう欠点があります。またうどんに小麦粉がくっついているのでゆで湯が濁り、そして粘ってくるので効率がよくありません。このようにでん粉には様々な種類があり、そしてそれぞれの特徴に応じて使い分けられています。