#317 小麦粉のタイプ①・・・強力粉・中力粉・薄力粉
これまでも小麦粉のタイプ(種類)については、無条件に使用してきましたが、ときどき「強力粉と薄力粉はどこがちがうんですか?」とのご質問をお受けするので、復習の意味も兼ね、改めて説明させていただきます。小麦粉の栄養成分は、多い順に並べると「炭水化物>水分>たんぱく質>脂質>灰分」となります(#193)。このとき小麦粉に含まれるたんぱく質の量に着目して、大体次のように分類されます:
11.5~12.5% ・・・ 強力粉(きょうりきこ)
9~11.5% ・・・ 準強力粉(じゅんきょうりきこ)
8~9% ・・・ 中力粉(ちゅうりきこ)
6.5~8% ・・・ 薄力粉(はくりきこ)
つまり単純に小麦粉に含まれるたんぱく質の量に応じて、小麦粉の種類は機械的に分類されます。そしてこのたんぱく含有量というのは、基本的には小麦の品種によって決まります。言い換えると同じ小麦を、製粉方法を変えることによって、強力粉にしたり薄力粉にしたりすることはできません。強力粉は、硬質小麦という硬いたんぱく質を多く含んだ小麦から、また薄力粉は、軟質小麦という柔らかいたんぱく質の少ない小麦を製粉することによって作られます。一般にたんぱく量の多い小麦は、硬く濃い色をしていているので、硬質小麦もしくは「赤小麦」と呼ばれ、同様にたんぱく量の少ない小麦は、柔らかく白い色をしているので、軟質小麦もしくは「白小麦」と呼ばれます。
小麦粉には様々な特性がありますが、その中で最も重要なものが「灰分」とこのたんぱく含有量です。そして小麦粉に限っていえば、たんぱく質と言うよりグルテンと言った方が、わかりやすいかも知れません。小麦粉には80種類以上のたんぱく質が含まれていますが、中でも特に重要なものがグルテニンとグリアジンです。グルテニンはゴムのような弾性をもつたんぱく質で、一方グリアジンは鳥もちのようなネバネバした粘性をもつたんぱく質です(#112と#113)。そして小麦に水を加えて捏ねて暫く放置すると、この2つのたんぱく質が一緒になって、グルテンというたんぱく質に変化します。つまりグルテンはグルテニンの「弾性」とグリアジンの「粘性」の両方を兼ね備えているので、「粘弾性」があるといいます。
世の中には穀物とよばれるものはごまんとありますが、このグルテンをもっている穀物は小麦だけです。小麦に近いライ麦にはグリアジンが含まれますが、グルテニンがないので小麦粉ほど加工適性がよくありません(#177)。日本の主食といえば米ですが、世界的にみれば文句なく小麦粉で、この理由はもちろん味の良さもさることながら、グルテンのお陰で加工適性が抜群に良いことが挙げられます。つまり水一緒に捏ねた状態で、その生地を自由自在に変形できるのは、小麦粉だけが持っている特長です。