#329 テンパリング(調質)サイロ更新
今年のGWは長期の休みを利用して、工場内の老朽化した調質サイロを更新しました。2012.4.24~5.6までの2週間にわたる長期の操業停止はこれまで盆・正月を含めても未曾有の経験でしたので、商品の供給が予定通りできるかどうか不安でしたが、何とか滞り無く終了し一安心いたしました。これも事前に皆様にご無理をお願いし、計画的な発注をしていただいたお陰です。改めてお礼申し上げます。
ところでサイロ(他にビンとかタンクとか呼ぶこともあります)とは小麦を蓄えておく大きな容器のことで、製粉工場では主として粗麦サイロ(raw wheat bins)と調質サイロ(tempering bins)の2種類があります。粗麦(そばく)サイロは工場内に搬入された小麦をそのままの状態で貯蔵しておくのに対し、調質サイロは加水した小麦を一晩寝かしておくところです。
後者は小麦に加水して寝かせることによって小麦をふやかし、皮離れを良くするのが大きな目的です。硬い小麦をそのまま挽くと皮の部分が細切れになり小麦粉に混ざって、具合が悪いのですが、水を加えて寝かせることで、胚乳部分は柔らかくなり、逆に皮は強靭になるので、両者を分離しやすくなるからです。詳細は#160をご覧ください。
さて弊社の調質サイロは現在、築約50年で、30年前に一度改修しましたが、未だに木造です。これまで修繕に修繕を重ねて今日まで維持してきましたが、もうそろそろ限界ということで今回思い切ってステンレス製に交換しました。何十年と使い慣れた、そして見慣れた設備が取り壊されるのは、見るに忍びないですが、これも時代の流れ、仕方ありません。現在のサイロはほとんどが鉄製もしくはステンレス製で、木造サイロというのは考えられませんが、実は木造にも利点があります。衛生面では鉄製が優れていますが、保存性、貯蔵性という点を考慮すると木造の方が優れています。
つまり鉄は熱伝導性が高いので、鉄製サイロでは外気温が直に小麦に伝わるために小麦の品質が低下しやすくなります。また内壁が結露しやすくなるため、内壁近くの小麦の水分そのものも影響受けやすく好ましくありません。その点木造サイロは熱断熱性が高いので、小麦の貯蔵設備として優れています。ただ反面害虫などの被害に遭いやすいのも事実です。また木造なので当然火災の発生確率は高くなります。実は30年前の改修工事のときには、溶接作業の残り火が原因で、あわや大惨事になるところでしたが、創業者の熱心な巡回見回りにより、間一髪未然に防ぐことができました。現在でも当時の「あわや大惨事という状況」を忘れないように、ボヤに遭った木片をサイロ前に吊るしてあります。
今回の更新作業で調質サイロに限って言えば後50年は大丈夫ですが、実を言うと建屋自体の老朽化が問題になりつつあり、今後はこれをなんとかせんといかんなあと思っています。ただ一気にやり替えるというのは中小企業にとっては正に清水の舞台から飛び降りる心境で、正に社運をかけることになります。また一社外に目を向ければ、TPPを始め社会的な不安定要因も数多く、この辺が思案の為所でもあります。それはともかく今回の改修工事の断片的な画像をアップしておきますのでよろしければご覧ください。