#335 機械製麺①・・・手打ちうどんのポイントの復習
これからは素麺、冷麦の季節です。ムンムンと不快指数が上がるこの時期、素麺の清涼感に勝るものはありません。さて素麺は大きく分けて、手のべ素麺と機械素麺の2種類があります。どちらも含まれる水分量に着目すれば、乾麺になりますが、普通は乾麺といえば後者を指すことが多く、前者はそのまま手のべ素麺といいます。前者は、小麦粉生地を手作業で引っ張り続けながら一本の細長い麺に仕上げて乾燥させます。最終的には元の生地の1/10000の細さになり、この作業によって生まれる手のべ素麺独自のつるつる感は絶品です。
一方、機械素麺はロール機を使い、生地を延ばす方式で、大量生産が可能です。一般には乾麺は廉価で、手のべ素麺は高級というイメージがありますが、両者それぞれの特長があり、乾麺(機械麺)の方が好きだという方も多くいます。そこで今回は改めて乾麺の製造工程を説明したいと思います。ただ乾麺と言っても原料は小麦粉ですので、その製造方法の原理原則は手打ちうどんと何ら変わりません。そこで復習の意味も兼ねて、手打ちうどんのポイントを手短にまとめてみました。尚、手打ちうどんの作り方の詳細、例えば塩水の量などは弊社サイト「さぬきうどんの作り方」をご参照ください。
【1】水回し(混合)
最初は小麦粉と塩水とを均一に混ぜあわせますが、「言うは易く行うは難し」です。元々小麦粉と水との相性はあまり良くないので(#292)、この作業は意識してやらないとうまくいきません。多分この「水回し」工程が一番難しく、そして軽んじられている工程でないかと思います。水回しの重要性が余り意識されない一つの理由は、うまくいってもいかなくても、後で捏ねた団子(小麦粉生地)は同じように見えるからだと考えます。
水回しがうまく完了すると、全体が小さな塊が集まった「そぼろ状」になります。そぼろ状とは、小麦粉と水が混ざり合っただけの状態を言います。ただ現実にはどんなに丁寧に水回しをしても、僅かですが「捏ねる」という動作が入ってしまいますが、理想は小麦粉と水を混ぜ合わせるだけです。水回しが完了すると、この状態で15~30分乾燥しないようにして放置すると、毛細管現象によって小麦粉の隅々にまで水分が行き渡り、水回しが完全なものとなります。このそぼろ状態で放置することを、「予備熟成」もしくは「そぼろ熟成」といいます。これは加水量が少ないとき、もしくは気温が低いときに特に有効です。
【2】捏練(ねつれん)
水回しが完璧にできれば、後は捏ねるだけです。少量の小麦粉であれば、手作業(つまり手で捏ねるだけ)も可能ですが、普通は生地がまとまった時点で足踏みを行います。手だけだと、力が弱かったり、加圧できない部分ができたりして、均一なグルテン繊維ができないからです。その点足踏みを行うと、全体重が生地にかかるため、踏む動作を繰り返すだけで、充分な「捏練効果」が得られます。暫く踏み続けて、生地がぺっしゃんこになると、生地を重ねあわせて、再度足踏みを行います。この作業を数回続けると、生地が徐々に硬化し、折り曲げたときにヒビ割れが起こりますが、これが足踏み作業終了のひとつの目安です。踏めば踏むほどコシがでて、おいしいうどんになるだろうという気持ちはわかりますが、「過ぎたるは及ばざるが如し」です。
【3】熟成
充分に捏ねた生地を放置(熟成)することで、小麦粉中のグルテニンとグリアジンからグルテンが作られます。ここで注意すべきは、気温が低いと(10℃以下)何時間放置しても熟成しないので、適温で熟成することが重要です。
【4】圧延 (延ばし)
【5】包丁切り
この【4】、【5】は練習するばするほど上手になります。