#348 ブラウワーと全粒粉との違い
「ブラウワーと全粒粉とはどこが違うのですか?」という質問を時々いただきます。一応、弊社サイトでも説明はしていますが、言葉だけの説明なので、今ひとつ分かりづらいかも知れません。そこで今回は改めてイラストを交えて両者の違いを分りやすく説明いたします。尚、全粒粉によく似たものとして、「グラハム粉」がありますが、これについては#246で説明してありますので、興味ある方はご覧ください。
それでは全粒粉から。全粒粉の読み方としては、「ぜんりゅうふん」と「ぜんりゅうこ」、どちらもありのようですが、前者の方が多いようです。全粒粉は文字通り、小麦の粒を丸ごと粉砕して粉にしたものです。小麦の主たる部分は、小麦色をした表皮部分と、乳白色をした内側の胚乳部分です。よって普通の小麦粉は、胚乳部分だけの白い小麦粉ですが、全粒粉は表皮部分も一緒に挽きこんでしまうので、一見してくすんだ褐色になり、普通の小麦粉とは全然違うことがわかります(右下図参照)。
全粒粉は表皮部分(小麦ふすま)を挽きこんでいるため、食物繊維を多く含み、現代の食生活にとってはもってこいの食材ですが、話はそう簡単ではありません。ふすまや胚芽部分の割合が多くなると、パンを焼くとき、生地中のグルテン組織が、殻などの硬い組織で分断されてしまいます。その結果、アルコール醗酵によって生地が膨れたときに、そのガス(二酸化炭素)を保持できず、膨らみが悪くなってしまい、食感の良くない硬いパンになってしまうのです。
また小麦の断面をみると、クリーズ(右図)と言われる溝が中心部分まで深く入り込んでいるのがわかります。よってこの凹んでいる部分には、ちりやほこりが溜まりやすく、全粒粉にした場合にはこの部分も一緒に挽きこんでしまい、小麦粉の食味に良くない影響を与える可能性があります。
次にブラウワーです。ブラウワーは表皮(小麦ふすま)部分と胚乳部分とを別々に製粉し、後でこの2つを加えたものです。もう少し詳しく説明すると、現代の製粉方法は、段階式製粉方法といって、一粒の小麦は約40種類の上り粉に採り分けられます(#161)。よってこの中の、胚乳部分からとれた上り粉と、表皮の粗い部分だけを加えたものがブラウワーです。こうすることにより小麦の凹んだところも、取り除くことができ、素直なそしてすっきりした味に仕上がると考えます。
また「粗い部分のふすま」を加えるには理由があります。弊社では、当初ふすま部分を大きなものから、小さく粉砕したものまでいくつか試してみましたが、ふすま片が大きいほど風味、食感が向上するという感想が多く聞かれました。胚乳と異なり、ふすま部分は、細かくなると、どうしても小麦の風味というよりも「小麦の臭い」がでてくるような気がします。シリアルも、箱の底に溜まっている粉っけの多い小さなものよりも、上部の大きな塊の方が、食感が良いのと同じであると考えます。このような商品を取り分けることができるのも、段階式製粉方式の副産物かも知れません。
五訂食品成分表をみると、通常の強力粉と全粒粉に含まれている食物繊維は、それぞれ2.7%と11.2%とあります。一方、ブラウワーには7.2%含まれているので、単純に食物繊維の量だけに着目すると、ブラウワーは強力粉と全粒粉をほぼ同量混ぜたものに等しくなります。我田引水的で少々申し上げにくいのですが、食物繊維の必要性を意識し、また新食感をご希望の方は、是非一度ブラウワーをお試しください。