#367 世界の穀物事情2013
先日、JA全農様のお話を拝聴する機会がありました。現在の世界の穀物需給がコンパクトにまとめられていましたので、私なりに関心があるところだけをダイジェスト版としてご紹介したいと思います。主要穀物といえば、トウモロコシ、大豆、小麦、コメですが、これらを併せると年間22億トン以上も生産されています。世界人口を70億人とすると、1人当たり年間300kg余り、つまり毎日1kg見当でしょうか。
以下、直近データ(2012/2013)を基に、ご紹介いたします。
①トウモロコシ
世界で年間8億5000万t生産され、2大生産国は、アメリカと中国です。アメリカの人たちはトウモロコシを沢山食べているわけではなく、ほとんどがエタノール燃料用、飼料用、輸出用で、食用は僅かです。エタノール用途は、エネルギーの自立、つまり石油の中東依存を減らすため、ブッシュ政権時代に始められました。ただ実情は経営が不安定な農家の保護が真の理由とも言われていますので、いま話題のシェールガスの生産量が増えても、エタノールは残ると言われています(?)。
②大豆
世界で年間2億7000万t生産され、中国はなんと6300万tも輸入しています。人口が多いので沢山使用するのはわかるけど、それにしても多いのはなぜかというと、中華料理用と聞いてなんとなく納得。ところで中国は、主要穀物すべてを多く生産している農業大国ですが、そのほとんどを国家統制品目に指定し輸出を禁止しています。
③コメ
世界で年間4億6600万tが生産されています。流石に生産国のほとんどはアジアです。日本はコメが余っていますが、ガットウルグアイ・ラウンドによりミニマムアクセス米を年間70万t程度輸入しています。
④小麦
さて我々の関心事である小麦は、世界で年間6億5000万tが生産されていますが、そのうち輸出に回るのは2割程度の1億3000万tです。輸出御三家は米国、カナダ、豪州で、日本が輸入している590万tはほぼ全量この3ヶ国から輸入しています。これらの国々は、品質もトップクラスで、パン用はカナダ、米国、麺用は豪州、そしてケーキ用は米国というのが通り相場です。数年前の大干ばつのとき、3ヶ国以外からの輸入の可能性を探るために、他国の小麦も試しましたが、上記3ヶ国に匹敵する品質の小麦は見当たらなかったと聞いています。
さて日本は現在TPP交渉に入るかどうかの議論が活発になっています。それに関連してか、最近では、日本農業に競争力をつけ、現在4500億円の農林水産物輸出を、2020年には倍増の1兆円にしようという記事も見かけました(2013.02.18日経)。これは確かに大切なことだとは思いますが、これまでそういった努力を怠ってきたわけでもないので、なかなかハードルは高いのではないかと考えます。
最後に、TPPはアメリカの為にもならない、という興味深い意見を聞きました。簡単にいうと、こういうことらしいです。現在、日本は農産物製品だけでなく、飼料なども多くアメリカから輸入しています。そして、もしTPPが発効されると、アメリカからの畜産物輸出は、増えるけれどそれ以上に、アメリカ以外の他国からのより安価な製品がより多く入ってくると予想されます。その結果、アメリカに限って言うと、畜産物の対日輸出は855億円増えるけれど、穀物輸出が2,323億円減少するので、トータルとしては、現状より1,468億円減少するというものです。これは大本営発表的、もしくは眉唾的、またまた我田引水的なところもあるかも知れませんが、具体的な資料を基に説明されると、思わず「なるほど!」と唸ってしまいます。それ程TPPの影響を予想するのは難しいことだと思います。