#370 現代の食料事情
ご存知のように世界の人口は、かなりの勢いで増加していて、現在70億人を突破しています。小学校の社会の授業では、確か32億人と習った気がするので、当時からすると2倍以上です。従来は人口増に見合うだけの食料増産が行われてきましたが、将来はどうなるかはわかりません。楽観論、悲観論両方ありますが、小麦については#261にて少し悲観的な見方を紹介しました。ただ何れにしても、食料を大事にしないといけないことに間違いはないのですが、現状は必ずしもそうはなっていないようです。以下はジャパン・タイムズ(2013.01.21)の記事です。ご参考までにどうぞ。
【信じられない食料の無駄】
現在食料危機や不足が問題になっているが、実は生産される全食料の30-50%もが、廃棄されているという衝撃的な調査レポートが発表された。これは単に政府を非難することは、簡単だけれど、実は我々の誰もがこれに関係しているのだ。よって他人任せにせず、我々も問題意識をもって無駄の削減に勤めなければならない。
英国機会学会によると毎年世界中で生産される食料44億tのうちおよそ半分が人々の口に入っていないという。またFAO(国連の食料農業機関)の要請により、スウェーデン食品・生命工学研究所がおこなった調査(2011年)でも、世界の食料生産量の1/3にあたる13億tが毎年廃棄されているという。世界人口は70億人を超え、増え続けている中、8億7000万人もの人々が慢性の栄養不良とみなされている。気候変動が農作物の生産に影響を及ぼしている昨今、食品を無駄にする余裕はないはずだ。
収穫されることなく、立ち枯れする作物。貯蔵や輸送状態が悪く廃棄されるもの。スーパーや家庭で無駄になるものなど理由は様々だ。今後2050年までには2倍の食料生産が必要だと言われているが、現状をみていると、心許ない。熱帯地方では、収穫された野菜や果物の30-50%が廃棄されるという。ガーナでは2008年、貯蔵設備の不備により、トウモロコシの半分がだめになった。逆にパキスタンでは設備の改良により食料廃棄が16%削減された。道路が良くなると、より早くそして良い状態で届けることができるし、携帯電話の普及など、情報網の発達により、的確な需給予測が可能になり、その結果無駄が削減できる。
先進国では、単に外観が良くないといった理由で、店頭に並ばないことも多い。イギリスでは信じられないことに、野菜の大きさや外観が市場の規格に合わないという理由だけで、30%が収穫されない。「完璧な外観」を求める日本の消費者も、この問題を正しく理解すべきだ。食品の事件が相次いだことで、消費者や小売業者は、食品の消費期限に敏感になっている。その結果、期限を厳格に守りすぎるために、大量の廃棄物を生み出している。
日本の食料廃棄は年間1700-2300万tと推定されている。これは最低の1700万tとしても、国内生産の30%に相当し、「食料安全保障」の見地からも驚くべき数字だ。また農水省の推定値である2300万tだと、金額換算で11兆円に相当し、これは日本の農水産業の年間生産額とほぼ同じだ。しかもその処理費用に2兆円がかかるのだ。
東京都単独では、毎日6000tの食料廃棄をだしているが、これは450万人を養うのに十分な量だ。そして日本全体では40%もの食品が廃棄されている。しかし同時に75万人もの人々が十分な食料を口にできないし、日本は食料全体の60%を輸入に頼っている。コンビニでは、完璧な食品であるのにも拘わらず、消費期限が数時間過ぎただけで、大量の食品が廃棄されている。
よって今後我々は賢く買い物をしなければならないし、また正しい食習慣を身につけるべきだ。先進諸国では、購入された食品の半分が廃棄されることも珍しくない。しかしこれは「1つ買えば2つ目は無料」といった不必要な食品を購入させるスーパー側の販売方法にも問題がある。バーゲンセールは魅力的だが、我々はもう少し賢く買い物をするべきだ。購入履歴は、POSデータにより完全に把握されているので、我々が無駄のない賢い買い物をすれば、その思いは店舗側にも届くはずだ。食品廃棄をゼロにするのは不可能だが、生産量の半分が、見た目を理由に廃棄される現実は我慢できない。